研究課題/領域番号 |
19K00066
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研究機関 | 国際仏教学大学院大学 |
研究代表者 |
堀 伸一郎 国際仏教学大学院大学, 国際仏教学研究所, 研究員 (60339778)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | サンスクリット写本 / 写本識語 / 東インド中世史 / ヴァルマン朝 / パーラ朝 / 後期インド仏教史 / インド暦 / 東インド写本 |
研究実績の概要 |
東インドで作成されたKarandavyuhaサンスクリット写本について、日本印度学仏教学会第72回学術大会で口頭発表を行い、英語論文を刊行した。同写本の筆写完了日については、2015年の論文で西暦1456年10月27日水曜日に確定させることができたが、従来利用できる写真版が不鮮明であるため識語の精確な解読のためには現物の探索が必要不可欠であった。幸い、2019年にムンバイーを代表する博物館Chhatrapati Shivaji Maharaj Vastu Sangrahalayaが同写本を所蔵することを突き止め現物を実見できたため、識語の解読を大幅に改善することができた。論文では同博物館の提供するデジタル・カラー画像を同館許可の上、掲載した。本写本は、東インドで作成されたことが確実なサンスクリット仏教写本のうち、最も新しい日付を識語に明記しており、この時点まで東インドで大乗仏教徒が活動していたことを明確に示す証跡である。 本写本識語を含め、15世紀に東インドで作成された4点のサンスクリット写本について、ドイツ・ハレ大学と日本の共同オンライン講演会で発表を行った。同発表では、インド暦西暦換算コンピューター・プログラムPancangaによって識語に明記される日付を確定させた上で、識語に記録される村落名についてインド地名データベースIndian Place Finderを援用して候補地を絞り込み、人名とその肩書についても扱った。4点のサンスクリット写本の共通点をまとめた上で、写本が作成された歴史的社会的背景に触れた。イスラーム王朝の実効支配下にあったと考えられる15世紀の東インド(特に現在のビハール州)の村落地域で、出家・在家双方の仏教徒が活動し、大乗仏教文献や密教文献を伝承していたことが明らかとなった。発表内容は、英語論文として公刊される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19パンデミックによる渡航制限や写本所蔵機関の休館・利用制限などのため、2021年度に予定していた海外調査が実現できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の世界的感染拡大のため、2021年度に参加・発表を予定していた二つの国際学会がいずれも2022年度に延期された。海外調査が実現できるまでは、写本所蔵機関にメールで照会し、写本の撮影を依頼し、デジタル画像などを入手したうえで研究を進め、状況が改善し次第、実見調査を実施する。状況によっては研究期間の延長を視野に入れざるを得ない。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の世界的感染拡大により、2021年度に参加・発表を予定していた二つの国際学会がいずれも2022年度以降に延期され、2021年度に予定していた海外のサンスクリット写本所蔵機関での実見調査も実現できなかったため、次年度使用額が生じた。海外調査を次年度以降に延期し、それに伴って生じる旅費も次年度以降に使用する予定である。
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