研究課題/領域番号 |
19K00066
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研究機関 | 国際仏教学大学院大学 |
研究代表者 |
堀 伸一郎 国際仏教学大学院大学, 国際仏教学研究所, 研究員 (60339778)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | サンスクリット写本 / 写本識語 / 後期インド仏教史 / 東インド中世史 / パーラ朝 / ヴァルマン朝 / アバヤーカラグプタ / 文化財修復 |
研究実績の概要 |
当初2020年8月に予定されていたが、COVID-19のパンデミックのため2度の延期を経て、2022年8月15~19日に大韓民国ソウル特別市、ソウル大学校冠岳キャンパスで開催された、第19回国際仏教学会に参加し、東ベンガルを支配したヴァルマン朝のハリヴァルマン第8年の日付が識語に明記されるPancavimsatisahasrika Prajnaparamita(二万五千頌般若)サンスクリット貝葉写本について、ベンガルの暦法に基いて写本の年代を西暦1089年10月3日に確定させたうえで、章構成や題名など他写本にない特徴について現地で発表した。 2019年度に公刊した論文で確定できた、パーラ朝ラーマパーラ第39年の日付が識語に明記されるPancaraksa貝葉写本の正確な日付(西暦1117年8月2日木曜日)に基いて、完成時期がラーマパーラの即位紀年で記されるアバヤーカラグプタの3作品の年代を絞り込む論文を発表した。拙論には、ラーマパーラ在位年それぞれの期間を2年以内の範囲に絞り込む一覧表を付した。この表はラーマパーラの即位紀年を記す他の史料にも適用できる。 2020~2021年度はCOVID-19のため海外で写本調査ができなかったが、2023年3月に3年2ヶ月ぶりとなる海外調査をイギリス・アイルランドで実施できた。ダブリンのThe Chester Beattyでは、Pancavimsatisahasrika Prajnaparamitaサンスクリット写本(CBL InE 1463)の貝葉に癒着した断片の剥離など、修復作業が現地で進められていた。その結果、前回の実見調査で読めなかったテキストが解読でき、断片のテキストも他の葉に接合することが明らかになった。文化財修復と文献学の共同作業の成果といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020~2021年度はCOVID-19の世界的感染拡大のため海外で写本調査ができなかった。2023年3月に3年2ヶ月ぶりとなる海外調査をイギリス・アイルランドで実施できたが、北米、南アジアで予定していた調査が未実施のため、補助事業期間を1年延長する申請をし承認された。
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今後の研究の推進方策 |
北米、ヨーロッパ、南アジアの写本所蔵機関に出張しサンスクリット写本の実見調査を行う。15世紀のサンスクリット仏教写本識語に記される村落名に比定できる可能性のあるビハール州の行政村・自然村の現地調査を行う。The Chester Beattyの文化財修復担当者と連絡を取りながら、Pancavimsatisahasrika Prajnaparamitaサンスクリット貝葉写本(CBL InE 1463)の解読、文化財科学的共同研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の世界的感染拡大のため、2020~2021年度は国際学会が延期され、海外調査も実施できなかった。2022年度は国際学会に参加し、一度の海外調査が実現した。予定していた海外調査を次年度に実施するため補助事業期間を1年延長する申請をし承認された。
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