2023年度は、これまでの研究のまとめとして、宗教起源論を考える上で欠かせない19世紀英国、すなわちヴィクトリア時代(1937年~1901年)の宗教論の検討にあてられた。具体的には、スコットランドのジョン・ファーガソン・マクレナン、ウィリアム・ロバートソン・スミス、ジェイムズ・ジョージ・フレイザー、またイングランドのエドワード・バーネット・タイラー、ロバート・コドリントン、さらにはチャールズ・ダーウィンのテクストが対象となった。 まず、ヴィクトリア時代の宗教論の特徴として、1)「進歩イコール進化」、2)「未開イコール原始」、3)「起源イコール本質」の三点が前提とされていることを導き出した。 そのうえで、20世紀後半の宗教概念批判を先取りする視点が既にロバートソン・スミスによって、マギア(呪術・魔術・魔法)を人間にとって普遍的なもとして捉える見方がフレイザーによって、提出されていたことを明らかにした。 研究代表者である江川は解説論文「ヴィクトリア時代の宗教研究――その地域性と特殊性」を執筆し、2023年3月に、「シリーズ 宗教学再考」(国書刊行会)のなかの一冊として、江川純一・山﨑亮監修、『マナ・タブー・供犠 英国初期人類学宗教論集』を刊行した。同書は、研究代表者と研究分担者二名の共同作業の結果であり、本研究の第一の成果となる。 2023年2月にドイツとオーストリアの研究機関において、研究代表者が実施した文献調査の成果は、2023年度に刊行される予定である。
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