研究課題/領域番号 |
19K00077
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
青柳 かおる 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (20422496)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イスラーム / 出生前診断 / 障害者 / ガザーリー |
研究実績の概要 |
出生前診断や中絶に関する問題として、イスラームにおける障害者について調査した。コーランにおける障害者について触れている章句、困窮者等を扶助するための喜捨、障害者に関するファトワー(一般信者の質問に対するイスラーム法学者の回答)について分析し、イスラームにおける障害者に関する議論について明らかにした。 コーランでは、現実世界の障害者に関しては、宗教的義務が免除されること、障害者を食卓(共同体)から排除してはいけないこと、契約の際に後見人が必要であることが述べられている 。コーラン解釈の際には、障害者という文言があっても比喩であり、現実世界の障害者ではない場合があることに注意しなければならないだろう。 ザカートは一年間所有していた財産に課される税のようなものであるが、サダカは個人が任意で慈善団体もしくは困窮者に金品を渡したり、広く慈善活動を行うことである。エジプトの障害者施設で調査した研究によると、富裕層の障害者の場合は高度なサービスを受けられる施設に入ることができるが、貧困層の場合は、低いサービスを受けることになってしまう。 障害者に関するファトワーによると、神が障害者を創造された理由として、障害は人間には計り知れない神の創造であり、それを乗り越えれば天国に行くことのできる試練であるとされる。また男性の障害者の世話をしている女性の介助者や、障害者の家族を持つ人からの質問に対するファトワーを検討したが、男女の隔離や姦通の禁止といったイスラームの教えから問題を解決しようとしていた。 続いて、古典時代の思想と現代との結びつきという点から、ガザーリーの「婚姻作法の書」の内容について調査した。「婚姻作法の書」はアラビア語の『宗教諸学の再興』とそのペルシア語の要約版『幸福の錬金術』に収録されているので、両者の内容、引用されているコーランの文言、ハディース、伝承などを比較した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
出生前診断に関するテーマとして、イスラームにおける障害者に関する議論の諸相について調査できた。またガザーリーの「婚姻作法の書」について、アラビア語版とペルシア語版を比較することができた。
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今後の研究の推進方策 |
出生前診断と中絶について、スンナ派だけではなく、シーア派について調査する。また出生前診断を行った女性、中絶した女性、障害児を産み育てている女性などのインタビューのニュースなどを収集し明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外出張および国内出張を行わなかったため、次年度使用額が生じた。今年度は出張を行ったり、研究に関する書籍やパソコン等を購入する予定である。
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