研究課題/領域番号 |
19K00079
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高橋 徹 (拓徹) 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 助教 (90795626)
|
研究分担者 |
小倉 智史 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教 (40768438)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | カシミール / イスラーム / セキュラリズム |
研究実績の概要 |
年度末に行った本プロジェクトの研究会(Zoom開催)において、研究代表者の拓が報告を行い、本プロジェクトのテーマであるカシミール中世の2人の詩人聖者(Lal Ded, Sheikh Nooruddin)の解釈が、20世紀においてどのように行われ変遷したかについて、主に「セキュラリズム」概念とのかかわりにおいて、まとめて発表した。同時に、本プロジェクト全体を俯瞰するうえで重要となる文献(16世紀~現在)の同定・リスト化を行い、今後の方向性についてメンバー間で協議した。 拓発表の概要は次の通りである。詩人アブドゥル・アハド・アーザード(1903~48)の遺稿でありカシミーリー文学史研究の嚆矢『カシミーリー語とその文学』では、ヌールッディーンの詩についてペルシア語・アラビア語よりサンスクリット語からの影響が大きく、またラール・デ―ドおよびヌールッディーン両者の基本的性格はその土着性(maqamiyat)にあるとしている。ところが、20世紀カシミール最大の政治的リーダーであるシェイク・アブドゥッラーが1970年代後半~80年代初頭にジャンムー・カシミール州首相として推し進めた文化政策では、この両者の詩はヒンドゥーとムスリムの2大伝統の統合という意味でのセキュラリズムを体現し、その限りでカシミールの文化伝統を根本的に規定しているとした。この定義はむろん、当時のアブドゥッラーがインド憲法の枠内におけるカシミール自治を追求しており、インドの国是であるセキュラリズムに沿うかたちでカシミール文化を再定義する必要に迫られていたために与えられたものである。 研究会をオンライン(Zoom)で行ったため、海外からの参加が比較的容易で、本プロジェクトに新たにかかわることになった海外研究者たちとコミュニケーションを取ることが可能となり、人的ネットワークを広げることが出来た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度(2020年度)はコロナ禍のため、海外における調査や海外研究者との連携を必要とする本プロジェクトは基本的に待機状態となった。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度には、コロナ禍の状況をたしかめつつ、昨年度に引き続きオンライン研究会などを開催して行く予定である。本プロジェクトを総括する会議(conference)については、当初は2021年に開催予定だったが、2022年秋に延期する方向で予定を組みなおしているところである。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で研究代表者・研究分担者ともに海外出張ができなかったため、次年度使用額が生じた。 使用計画としては、その大半を2022年秋に開催予定の本プロジェクト会議(conference)開催のための招聘費(旅費)・人件費などにあてる予定である。むろん研究代表者・研究分担者の海外出張が2021~22年度に可能となれば、出張旅費としても使用予定であるが、その場合でも、残額の全てを投入し、できるだけ多くの国内外の関係研究者を招聘したいと考えている。
|
備考 |
いずれも、小倉智史によるPerso-Indicaのエントリー(査読あり)。
|