2020年度から所属組織の長に就いたため、研究時間を大幅に校務に割くことになり、海外調査にも行けずにいたが、研究最終年度の2023年度、ようやくエジンバラのスコットランド国立図書館での資料調査、収集を行うことができた(アイルランド長老教会歴史協会での調査は時間的余裕がなく断念)。 この調査によって、研究課題として掲げていた「『満洲国』における神社参拝問題」と「『満洲国』諸教会の合同問題」の考察を深めることができた。 同様の問題に直面していた植民地統治下の朝鮮と台湾とは対照的に、「満洲国」における神社参拝問題と教会合同問題はその概要すら十分に分かっていなかった。しかし今回の研究、特に宣教師資料の発掘によって、以下に簡単に述べるように、その概要が明らかになっただけでなく、朝鮮、台湾の状況との違いを示すことができた。 「満洲国」の神社参拝強制は、「孔子祭」への参加強制の後にやってきたが、神社参拝の強制が始まったころ、すでに宣教師はキリスト教学校運営からの撤退を決定しており、朝鮮や台湾と異なってキリスト教学校が対応に苦慮することはなかった。しかしそのことはこの問題自体が軽微であったことを意味するわけではなく、宣教師資料が「(満洲の教会が騙されて朝鮮の教会と同じ選択をすることになったら、ミッションは重大な問題に直面することになる」と記したことが現実となったように、教会への影響が極めて大きかった。 また「満洲国」の教会合同の大きな特徴は、政府以上に協和会の意向がものを言ったことである。「満洲国」の「理想」を実現させるためにあらゆる領域への介入を行った協和会は、キリスト教会を欧米ミッションの支配から脱却させるべく、日本人クリスチャンリーダーの協和会員を通して神学校教育にも入り込み、合同推進の旗振り役を行った。これは、他地域には見られない「満洲国」における教会合同の一つの大きな特徴であった。
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