研究課題/領域番号 |
19K00095
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研究機関 | 大阪国際大学 |
研究代表者 |
三木 英 大阪国際大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60199974)
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研究分担者 |
沼尻 正之 追手門学院大学, 地域創造学部, 教授 (10300302)
岡尾 将秀 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 都市文化研究センター研究員 (90773672)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | パキスタン人ムスリム / シリア人ムスリム / スリランカ人ムスリム / イスラーム / ベトナム仏教 / スリランカ仏教 |
研究実績の概要 |
二年目にあたる2020年度では、新型コロナウィルス感染拡大という特殊な状況下、当初の研究計画遂行を断念せざるを得なくなった。計画では、移民受け入れの先進国である韓国あるいは台湾におけるニューカマー宗教の調査、また首都圏をはじめ国内各地をフィールドに調査を実施するはずであったが、それを果たせない状況が続いたことは極めて残念なことであった。 長距離を移動しての調査が不可能ということから、当初計画を修正し、報告者の拠点とするところから比較的近距離の範囲内にフィールドを求めたのが、20年度であった。公共交通機関を利用して片道一時間程度の範囲のなかに調査対象として相応しいケースを探し、足繁く通うという試みを続けてきたのである。 もちろん調査対象者たち自身も感染問題に過敏であることから、時間をかけての聴き取りは控え、知り合いになるということを訪問の第一目的とした。この地道な過程あってこそ、重厚な調査が(2021年度に)可能となることを信じてのことである。 主なるフィールドとしたのは兵庫県三木市と姫路市、大阪府大阪市・八尾市である。三木市は近年イスラム教徒の増加が著しく、マスジド(礼拝所)も開堂されたばかりの街である。姫路市は1970年代以来のベトナム人の定着地で、いま二つのベトナム仏教寺院が存在する。大阪市では、西淀川区に日本有数の規模のマスジドが存在するが、住吉区でも極めて特異な――イスラームと日本文化の融合を念頭に置いて活動しているという点で特異な――イスラーム関係施設の運営が約一年前から開始された。そして八尾市では、建売住宅を改装したベトナム仏教寺院に、市内に定住するベトナム人や技能実習生として来日したベトナム人が詰めかけている。 また在日のスリランカ人とその宗教も当初からの研究対象で、静岡県の富士山麓にあるスリランカ仏教寺院へのアプローチを、先方のご都合を配慮の上、続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
区分を「遅れているDelayed」としていないのは、当初計画の通りに研究を遂行することが難しいと判断しているからである。判断の根拠は、現時点で収束の兆しの見えないCovid-19の問題に尽きる。当初計画への「復帰」あるいは計画堅持が難しい以上、当初計画を前提としてのそこからの「遅れ」という判断はできない。 また「計画以上の進展」も「順調な進展」も、やはりそこに当初計画が前提となっている以上、本研究は上記二つの区分にあたらない。 本研究は、基本的コンセプトを変更することなく、調査計画を現状に即して見直し、遂行されている。その進捗状況は良好であると判断している。限定的なフィールドのなかでインテンシブな調査が行えている、と自認しているからである。「やや遅れいている」とするのは、当初計画を実現へと移せていない点を考慮したのである。
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今後の研究の推進方策 |
感染状況が今後の研究推進に大きく影響する。とはいえ、対策は講じておくべきであるため、2021年度において拡大収束の可能性が低いことを想定し、以下を考えるものである。 まず、補助事業期間の延長を申請する。22年度であれば韓国・台湾での調査が可能となることを期待しての上である。日本国内のニューカマー宗教と韓国・台湾におけるニューカマー宗教の比較は本研究の重要な部分であり、渡航が認められるようになれば是非とも取り組みたいところである。 同時に、20年度に遂行してきた地道な調査を継続する。大阪・兵庫という限定的な地域におけるイスラームあるいはベトナム仏教へのアプローチである。20年度の努力は決して小さなものではなく、上記ニューカマー宗教に関わるデータは着実に集積されている。それらは「狭く深く」行った調査の成果で、どちらかといえば「広く浅く」行おうとしていた当初の計画通りのものではないが、結果的に貴重な調査研究を行い得ていると自認する者である。その継続が、21年度の主眼とするところである。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究はフィールドに出ての調査を主眼としていただけに、新型コロナウィルス感染拡大によりフィールドに赴くことが抑制されて当初使用計画に狂いが生じてしまった。 次年度は今年度の挽回を志して取り組むが、その2021年度の調査を有効・良好に遂行するため、それに供する物品20年度中に購入することとした。ところが購入にあたって、試算が正確なものではなかった。そのために少額ながら、未使用額が出てしまった。 残額は21年度に、有効に使用させていただく所存である。
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