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2020 年度 実施状況報告書

日本仏教と東南アジア仏教との比較研究-政治と権力の視点を中心として

研究課題

研究課題/領域番号 19K00097
研究機関国立歴史民俗博物館

研究代表者

松尾 恒一  国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (50286671)

研究分担者 片岡 樹  京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (10513517)
中西 裕二  日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (50237327)
上島 享  京都大学, 文学研究科, 教授 (60285244)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード東南アジア仏教 / 日本仏教 / 国家統治と寺院、仏教儀礼 / 東南アジア・東アジアにおける仏教と民間信仰の現況 / 日本における仏教、民間信仰の現況 / 僧団 / 寺院組織 / 上座部仏教圏と大乗仏教圏の、宗教と社会の比較研究
研究実績の概要

本「日本仏教と東南アジア仏教との比較研究─政治と権力の視点を中心として」共同研究は、日本史学・日本民俗学の研究者と、主として東南アジアを調査地域とする文化人類学研究者との共同により、大乗仏教圏の日本仏教と、上座部仏教圏との比較を、国家統治、各地域で仏教と関係を結んだ民俗信仰、特に民俗神と仏教との関係、に注目して、比較研究を推進して、数世紀~1000年以上の仏教の歴史を有する諸地域の、国家と仏教との関係性の比較により、仏教が果たした社会的な役割を解明することを目的とする。
2020年度は、コロナウィルスの国内外の蔓延のため、計画していた東南アジア(ベトナム地域の調査を計画)及び、国内の寺院の仏教儀礼の調査ができなかった。そのため、調査については国内の寺院と周辺地域の神仏信仰・行事、社会組織、生業との関係性の主とする民俗調査と史資料の調査を推進した。
片岡は、特に愛媛県菊間町に伝承される戦国落城伝説とその祟りの信仰を主題とする研究を進め、近代以降の行政主導の地方誌編纂により「定説」が形成された過程を解明し、亡霊の祟りは権力への異議申し立てよりは、むしろ書物の権威や国家権力を背景に確立した側面が強いことを明らかにした。
松尾は、近世の寺檀制度のなかでのかくれキリシタンのあり方をテーマに、その組織が数多くあった長崎の諸地域の聞き取り、遺物調査を進めた。本調査により、外海のように、檀那寺院がむしろ潜伏キリシタン組織を守った例や、根獅子のように集落全体が潜伏キリシタンであったことが露見した際、仏教の一宗派であることを主張して摘発の危機を乗り切ったこと、また、日本に先立って中国明代の観音信仰がマリア信仰や造形の大きな影響を受けて変容し、これが特に長崎における観音をマリアとして信仰するに至る基盤としての役割を果たしたことを中国、ヨーロッパの歴史文献、絵画・立像等の遺物を資料として解明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2020年度は、コロナウィルスの国内外の蔓延のため、計画していた東南アジア(ベトナム地域の調査を計画していた)地域の寺院・僧団組織・仏教儀礼の伝承、及びこれらの民俗化についての調査ができなかった。国内についても、仏教と地域社会の関係を解明するために重要な仏教儀礼の調査は、いずれの寺院も参観を許可しなかったため、計画を実施できなかった。そのため、調査については国内の寺院と周辺地域の神仏信仰・行事、社会組織、生業・生活との関係性の解明を目的とする聞き取り調査と史資料の調査を推進した。
また、計画していた共同研究会についても、分担者の所属大学・機関、いずれもが、コロナウィルス対策のため、機関内での研究会は許されず、on-line(zoom)による、研究会を実施したが、討議の深まり、資料の共有には、対面での研究会に比べると限界があり、目標とする成果への到達が充分に果たせなかった。

今後の研究の推進方策

初年度は、海外・国内ともに計画通りの調査を実施し、研究を推進し、昨年度は、この第一年度の調査テータの分析と、調査地域の過去の関連調査報告、先行研究に基づいて、研究を進めた。しかしながら、当初計画の研究成果を得るには不充分である。
昨年度、計画していた共同研究会についても、分担者の所属大学・機関、いずれもが、コロナウィルス対策のため、機関内での研究会は許されず、on-line(zoom)による、研究会を実施したが、討議の深まり、資料の共有には、対面での研究会に比べると限界があり、目標とする成果への到達が充分に果たせなかった。現在、大阪、東京をはじめとするコロナウィルスの状況の悪化のため、各大学・機関ともに、対面での研究会が許可されていない状況が続いており、この状況が、今年度いっぱい続く可能性が高い。このため、研究期間の延長を申請することを現時点で検討せざるを得ない状況にある。

次年度使用額が生じた理由

本共同研究においては、大乗仏教圏の日本と戒律を重視する上座部仏教圏との、宗教と国家・地域社会の比較をテーマとしており、日本、東南アジアそれぞれの地域の寺院と仏教活動、僧団組織と地域社会との関係等の調査が重要な計画項目である。しかしながら、日本国内、東南アジア地域ともに、世界的なコロナウィルスの状況の悪化のため計画を実施することができず、調査については計画通りの研究を進めることができず、調査は国内の民俗、歴史文献調査にとどまり、海外調査のための支出はなかった。
初年度は、海外・国内ともに計画通りの調査を実施し、研究を推進したので、昨年度は、この第一年度の調査テータの分析と、調査地域の過去の関連調査報告、先行研究に基づいて研究を進めた。しかしながら、当初計画の研究成果を得るには不充分である。
国内・海外の文化人類学、民俗の視点からの調査のほかに、分担者の所属大学での共同研究会も計画していたが、各所属機関がコロナウィルスの対策のため、所属機関内では実施できず、on-line(Z00M)による研究会としたため、研究会旅費の支出もなかった。
コロナウィルスの状況は日本国内・東南アジア地域ともに悪化する状況で、研究期間3年間のうちの2年間、計画した重要な東南アジア地域の調査が不可能となる可能性が高く、現時点では、研究期間の延長して当初の計画を遂行することを検討している。

  • 研究成果

    (24件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 4件、 招待講演 11件) 図書 (8件)

  • [雑誌論文] 神楽「八岐大蛇」を考える―アジア・ヨーロッパの龍と大蛇の信仰2021

    • 著者名/発表者名
      松尾 恒一
    • 雑誌名

      『さくらぴあ平和の舞<神楽の学校>特別公演」』ヒロシマ・ミュージック・プロジェクト

      巻: 2月 ページ: 7

  • [雑誌論文] 祟る中世―愛媛県菊間町の戦国落城伝説―2021

    • 著者名/発表者名
      片岡樹
    • 雑誌名

      『現代民俗学研究』

      巻: 13 号 ページ: 21-36

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 稲作・狩猟の祈願・祈祷としての神楽2020

    • 著者名/発表者名
      松尾 恒一
    • 雑誌名

      『九州の神楽 シンポジウム2020』宮崎県

      巻: 12月 ページ: 1-7

  • [雑誌論文] 民具的研究与展示2020

    • 著者名/発表者名
      松尾 恒一・阮将軍
    • 雑誌名

      中国民芸文芸家協会編『民藝 Folk Art』《民藝》雑志社ISSN:2096-5257

      巻: 第 17 期5号 ページ: 79-83

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 国家儀礼としての放生会・殺生禁断2021

    • 著者名/発表者名
      松尾恒一
    • 学会等名
      科研「日本仏教と東南アジア仏教との比較研究─政治と権力の視点を中心として」(代表:松尾恒一)研究会、京都大学(online)、2021年3月14日
    • 招待講演
  • [学会発表] 神楽「八岐大蛇」を考える―アジア・ヨーロッパの龍と大蛇の信仰2021

    • 著者名/発表者名
      松尾恒一
    • 学会等名
      ヒロシマ・ミュージック・プロジェクト主催:『さくらぴあ平和の舞<神楽の学校>特別公演」』、2021年2月13日、廿日市市(ウッドワン)
    • 招待講演
  • [学会発表] 津浪神楽団と「塵輪」2021

    • 著者名/発表者名
      松尾恒一
    • 学会等名
      ヒロシマ・ミュージック・プロジェクト、共催:廿日市市教育委員会「さくらぴあ平和の舞<神楽の学校>特別公演」)、2021年1月11日
    • 招待講演
  • [学会発表] 愛媛県菊間町の祭礼における牛鬼、妖怪譚としての牛鬼起源伝承2021

    • 著者名/発表者名
      片岡 樹
    • 学会等名
      科研「日本仏教と東南アジア仏教との比較研究─政治と権力の視点を中心として」(代表:松尾恒一)研究会、京都大学(online)、2021年3月14日
    • 招待講演
  • [学会発表] 古代・中世日本における孔雀明王法2021

    • 著者名/発表者名
      上島享
    • 学会等名
      科研「日本仏教と東南アジア仏教との比較研究─政治と権力の視点を中心として」(代表:松尾恒一)研究会、京都大学(online)、2021年3月14日
    • 招待講演
  • [学会発表] 第六天魔王の民俗の考察2021

    • 著者名/発表者名
      中西 裕二
    • 学会等名
      科研「日本仏教と東南アジア仏教との比較研究─政治と権力の視点を中心として」(代表:松尾恒一)研究会、京都大学(online)、2021年3月14日
    • 招待講演
  • [学会発表] 神楽の始まりと比婆荒神神楽2020

    • 著者名/発表者名
      松尾恒一
    • 学会等名
      ヒロシマ・ミュージック・プロジェクト、廿日市市教育委員会「さくらぴあ平和の舞<神楽の学校>特別公演」、2020年12月6日
    • 招待講演
  • [学会発表] 神楽はどのようにして男性宗教者による仮面の祈祷・芸能になったか―古代仏教儀礼の中世的展開としての神楽の可能性を考える―2020

    • 著者名/発表者名
      松尾恒一
    • 学会等名
      科研「神楽の中世的展開とその変容」(19K00092、代表:斎藤英喜)研究会、2020年11月8日)
    • 招待講演
  • [学会発表] 単独(招待)「日本的二十四節気-自然中孕育的生活・信仰・芸術-」(「日本の二十四節気-自然の中の暮らしの中で育まれた生活・信仰・芸術-」)、2020

    • 著者名/発表者名
      松尾恒一
    • 学会等名
      中国農業博物館主催、中国非物質文化遺産保護中心・中国民俗学会・中国農業歴史学会共催『二十四節気国際学術研討会』(北京)、2020年9月22日
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 孤魂と面然祭祀の歴史的展開;宗教儀礼の伝播と面然像の変化に注目して2020

    • 著者名/発表者名
      松尾恒一
    • 学会等名
      科研「9、10世紀敦煌仏教、道教、民間信仰融合資料の総合的研究」(代表:広島大学荒見泰史教授代表)、国際研究集会”敦煌と東アジアの信仰”、大阪大谷大学ハルカスキャンパス、2020年8月1日
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 祟る中世―愛媛県菊間町の戦国落城伝説―2020

    • 著者名/発表者名
      片岡 樹
    • 学会等名
      日本文化人類学会第54 回研究大会(2020.5.30-31オンライン開催)
    • 国際学会
  • [学会発表] 文化人類学教育の現場で考える日本文化―国外フィールドから見た 『逆さ読み』の日本文化論―2020

    • 著者名/発表者名
      片岡 樹
    • 学会等名
      韓国日本文化學會第58回國際學術大會招請講演 (2020.9.26於韓南大學校)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] 染谷友幸編『東アジア文化講座1 はじめに交流ありき「東アジアの文学と異文化交流」』、「南シナ海の海盗―張保仔と女海賊鄭一嫂」2021

    • 著者名/発表者名
      松尾 恒一
    • 総ページ数
      448
    • 出版者
      文学通信
    • ISBN
      978-4-909658-44-9
  • [図書] ハルオ・シラネ編『東アジア文化講座4 東アジアの自然観「東アジアの環境と風俗」』、「年迎えと祖霊祭祀―古代からの伝承、歴史と現代」2021

    • 著者名/発表者名
      松尾 恒一
    • 総ページ数
      432
    • 出版者
      文学通信
    • ISBN
      978-4-909658-44-9
  • [図書] 吉田一彦編『神仏融合の東アジア』、「媽祖・観音・マリア、 近世長崎における清国海商とかくれキリシタン―」2021

    • 著者名/発表者名
      松尾 恒一
    • 総ページ数
      726
    • 出版者
      名古屋大学出版会
    • ISBN
      978-4-8158-1021-4
  • [図書] 吉田一彦編『神仏融合の東アジア』、「中世の神と仏 」2021

    • 著者名/発表者名
      上島 享
    • 総ページ数
      726
    • 出版者
      名古屋大学出版会
    • ISBN
      978-4-8158-1021-4
  • [図書] 吉田一彦・上島享編『日本宗教史1 日本宗教史を問い直す』、「民俗から問い直す日本の宗教・信仰 世界のなかの日本、日本のなかの世界」2020

    • 著者名/発表者名
      松尾 恒一
    • 総ページ数
      326
    • 出版者
      吉川弘文館
    • ISBN
      978-4-642-01741-1
  • [図書] 荒見泰史編「仏教の東漸と西漸」『アジア遊学』251号、「明代、南シナ海の海盗の活動と記憶―日本・中国大陸・東南アジアの宗教史跡をめぐって」2020

    • 著者名/発表者名
      松尾 恒一
    • 総ページ数
      256
    • 出版者
      勉誠出版
    • ISBN
      978-4-585-22717-5
  • [図書] 荒見泰史編「仏教の東漸と西漸」『アジア遊学』251号、「清代前期、媽祖信仰・祭祀の日本伝播とその伝承―ヨーロッパの東アジア進出を視野に入れて」2020

    • 著者名/発表者名
      松尾 恒一
    • 総ページ数
      256
    • 出版者
      勉誠出版
    • ISBN
      978-4-585-22717-5
  • [図書] 菅野成寛編『平泉の文化史2 平泉の仏教史』、「平泉の寺院と法会」2020

    • 著者名/発表者名
      上島 享
    • 総ページ数
      181
    • 出版者
      吉川弘文館
    • ISBN
      978-4-642-06846-8

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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