研究成果の学術的意義は、マキアヴェッリの政治思想、とりわけその共和国理論を当時の歴史的文脈から明らかにすることによって、イタリア・ルネサンス思想を過度に単純化せず、その複雑な様相を剔抉したところにある。当時、多くの思想家は、来世での救済というキリスト教信仰を抱いていたが、同時にルネサンス期は異教の文化が復活した時代でもある。多くの思想家たちがフィレンツェ共和国という世俗的価値の繁栄を期待しつつも、同時に魂の救済を求めていた。マキアヴェッリはこれらが両立しないことを踏まえつつ、祖国の存続と繁栄のために、キリスト教の教義の中心を放棄したのである。
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