研究課題
基盤研究(C)
3年間の研究を通じて明らかになったことを簡潔にまとめるならば、1.技術メディアを主題にしたフランクフルト学派の著作が、既存の社会体制のなかで覆い隠されたものを大衆に知覚経験させるという志向が共通して認められること、2.テクストの修辞的なレヴェルにのうちにも、読者にオルタナティヴな知覚経験をパフォーマティヴなかたちでもたらすような戦略的な工夫が施されていること、の二点である。
表象文化論
本研究は、フランクフルト学派の思想家たちのテクストを、文体や修辞技法、読者の解釈行為など、従来見過されてきた側面に着目しつつ分析したことで、ラジオや映画、テレビといった技術メディアは、彼らにとって思弁的な省察対象だけでなく、支配体制のイデオロギーに抵抗するための批判的な視座を一般大衆のなかに涵養するための教育媒体としての意味ももっていたことを明らかにした。この点は、非実践的な知識人集団というフランクフルト学派にまつわる一般的なイメージを一新するという点で大きな学術的意義をもつ。