本研究は、近代日本を代表する舞踊家石井漠と石井漠の弟子である崔承喜の芸術活動と足跡を追うことによって、近代東アジアにおける越境する身体の美學がナショナル/トランスナショナルの問題系とどのように相応しているかを考察した。本研究の主な成果は、次の二点である。まず日本のモダンダンスと朝鮮のモダンダンスの成立と受容のプロセスを究明することによって、文化的ヘゲモニーは必ずしも政治的力によって決定されることではないことを明らかにした。また日韓のモダンダンスにはそれぞれの<民族美学>が敷かれていて、身体的越境は<民族美学>と響きあいながら行うことを具体的な事例研究を通して考察したことである。
|