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2020 年度 実施状況報告書

占領期エゴドキュメントをめぐる思想史文化史的検討と目録化に向けた実証的研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K00106
研究機関神戸大学

研究代表者

長 志珠絵  神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (30271399)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワードエゴドキュメント / 占領期 / ジェンダー
研究実績の概要

本研究の目的は、占領期のエゴドキュメント資料を読み解く作業を通じ、従来主に、日米という大きな主語間に限定されがちな占領期像をめぐって、これらを1ー地域文化史研究の素材としてそのローカリティをあわせて位置付けること、2ー単なる大文字の異文化表象分析にとどまらず、ローカリティに関わるアクターとその可能性を明らかにすること、3 1.2の視座をふまえ、素材としてのエゴドキュメントを思想史研究として読み解く方法論を模索すること、4,3に際しては特に、本国とは異なる自身の特権性に意識的な女性の書き手に焦点をあわせることで、ジェンダー射程に加え、軍隊文化や性差、階級差、旧植民地出身者などマイノリティの存在に敏感な書き手たちの「視線」のありようを構造として明らかにすることーを課題とする。ところで当初の計画では今年度のアウトプットの場は、海外出張による資料調査も兼ね、あるいは、インタビューなどによって資史料の幅を広げる試みにあった。しかし状況が制限されるなか、移動を伴う本格的な作業は、次年度後半に予定を変更した。今年度は主に、これまで集めた文献の翻訳作業や読みを深め、日本語文献とつきあわせること、特に社史や地域の新聞資料など照合すること、また参照系として同時代の労働省婦人少年局から発せられる、中央での女性政策の展開およびその思想性などについての言及を重ね(占領軍女性担当官と局との交流など:国立歴史民俗博物館による展示図録『性差の日本史』第7章解説)、比較の枠組みを設定することで、占領期女性のエゴドキュメントの読みを広げる作業を進めた。新聞寄稿等も行った(『京都新聞』2021.3.2<カラーで写された占領期の京都>の連載7回目、「被写体の女性たち」)。この結果、歴史展示に関わる報告書および図録を2点、研究課題をテーマに、学会大会の査読付きの報告を1点、英文論考1点、共編著1点の成果を得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画では資料調査も兼ねた海外出張を考えており、この点では計画変更せざるを得なかったが、まだ二年目でもあるため、これらの移動を伴う作業を次年度に変更することで軌道修正が可能であったと考えている。海外出張および国内外での遠方への移動を伴う調査の延期もしくは短縮などの影響は深刻ではあるが、当初の計画を変更することで、関連資料の主に文献収集や、翻訳も含めた史料の読みを集中的に進める方向での調整を進め、この結果として一定程度の成果を進捗させることができた。またそれらの成果のアウトプットについては、学会等のリモート対応に各学会が相当に尽力することで著しく進んだこともあって、特に国内学会での報告については十分に可能となった。ただし議論の活発さや意見交換、情報交換という点ではリモート報告は国内外を通じ、限界を感じざるをえない。当初の計画を予定通り進めるためには次年度後半では今年度の成果をふまえ、海外も含めての調査やアウトプットを進める必要がある。

今後の研究の推進方策

本研究は方法論の模索および史料収集という点で基礎研究としての役割を自負するものとして計画をたてた。このため当初の計画では海外も含めた資料の収集・調査に一定のウエイトをおいている。学会報告、意見交換の場の設定はこれら調査をふまえたものであった。このため今後、少なくとも次年度後半において、従来の研究スタイルが可能であればいち早く準備を整え、計画を元に戻して進めたい。特にインタビューについては早々に開始していきたい。
他方、パンデミック収束の状況が不穏であり、年度後半、次次年度にいたっても様々な困難がつきまとうようであれば、計画は大きく修正を余儀なくされ、特に海外調査についての精度をあげることは難しい。その場合には、国内での調査を充実させる一方、準備を整え、遠隔でのインタビューを積み重ねること、さらに、過渡的な方法ではあるが、遠隔リモートを多用することで、海外も含めたシンポジウム形式での意見交換、学術交流の場の設定を増やしていく予定である。海外出張および国内外での遠方への移動を伴う調査の延期・短縮などそれらの制限の影響への懸念はあり、特に研究者コミュニティの構築、ネットワーク作りという点で劣るものではあるが、他方で、国内外での成果発表そのものは容易であることや遠隔地の報告者の招請という点ではメリットもあることからこれらを生かし、アウトプットの機会を増やす方向に軌道修正をはかることを考えるものである。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件) 図書 (3件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Where and who have been Nisei soldiers―the war memory without gender?2021

    • 著者名/発表者名
      Shizue OSA
    • 雑誌名

      『国際文化学研究』

      巻: 55 ページ: 25-38

    • DOI

      10.24546/81012665

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 「<感染症の時代>をジェンダー射程で「読む」」2021

    • 著者名/発表者名
      長志珠絵
    • 学会等名
      日本大学史学会 シンポジウム・歴史教育の未来を拓くⅤ
    • 招待講演
  • [学会発表] 「占領期神戸の女性軍属のエゴドキュメントをどう<読む>か」2020

    • 著者名/発表者名
      長志珠絵
    • 学会等名
      日本思想史学会(年次大会 第三部会)
  • [学会発表] 「女系・女帝の可能性と<近代>」2020

    • 著者名/発表者名
      長志珠絵
    • 学会等名
      歴史学研究会(シンポジウム 「皇位継承論:女帝・女系の可能性)
    • 招待講演
  • [図書] 『<母>を問うー母の比較文化史』2021

    • 著者名/発表者名
      長志珠絵他編
    • 総ページ数
      342
    • 出版者
      神戸大学出版会
    • ISBN
      978-4-909364-10-4
  • [図書] 『性差の日本史』2020

    • 著者名/発表者名
      国立歴史民俗博物館
    • 総ページ数
      320
    • 出版者
      歴史民俗博物館振興会
    • ISBN
      978-4-86195-167-1
  • [図書] 『日本思想史事典』2020

    • 著者名/発表者名
      日本思想史事典編集委員会
    • 総ページ数
      744
    • 出版者
      丸善出版株式会社
    • ISBN
      978-4-621-30458-7
  • [備考] 神戸大学学術成果リポジトリKernel

    • URL

      http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81012665

  • [備考] 性差の日本史展

    • URL

      https://www.rekihaku.ac.jp/outline/press/p201006/

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公開日: 2021-12-27  

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