研究課題/領域番号 |
19K00110
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研究機関 | 麗澤大学 |
研究代表者 |
岩澤 知子 麗澤大学, 外国語学部, 教授 (60748375)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 諏訪流神道 / カミ信仰 / 神祇制度 / 神仏習合 / 密教 / 儀礼 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、中世諏訪の神仏習合思想から生み出された「諏訪流神道」の形成過程および構造の分析を通して、諏訪古来の「カミ信仰」が、古代律令制により導入された「神祇制度」、さらに中世における「仏教」との交渉を通して、いかに多義的な神の姿を創出するに至ったか、その豊かな歴史性や多様性を明らかにすることである。中世日本の神仏習合に関するこれまでの研究は、神道と仏教の習合関係を分析するに際し「神道」を一括りの概念として捉えてきた。本研究では、近年の神道史研究の成果を踏まえてさらに一歩を進め、この「神道」を「カミ信仰」「神祇制度」「神道」という三つの異なる概念から成るものと捉え直した上で、これら三要素の相互関係ならびに仏教との習合関係を探究していく。本研究が取り上げる「中世の諏訪流神道」は、このうちの「カミ信仰」「神祇制度」「仏教(真言密教)」の三要素が歴史的に複雑に絡み合って生まれたケースとみなされる。 中世の諏訪祭政体には、「神長」と「大祝」による「双分的首長制」が存在していたことが知られているが、これは諏訪古来の「カミ信仰」と、ヤマト朝廷によって確立された「神祇制度」との重層性を象徴するものと考えられる。2019年度は、この「神長」と「大祝」の関係性の解明を目指し、諏訪信仰における儀礼の構造分析を中心に、文献・史料の分析ならびにフィールド調査を行った。これまでの中世諏訪信仰の研究が、一般によく知られた『諏訪大明神画詞』や『神道集』など、おもに「大祝」側の文献・史料の分析を中心に進められてきたのに対し、本研究は、諏訪祭政体の双分構造において「神長」が果たした役割を明らかにすべく、神長・守矢満実が著した諏訪流神道に関わる文献・史料(『諏訪大明神深秘御本事大事』をはじめとする)の解読に焦点をあてている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、初年度は「諏訪流神道」の中心的テキストである『諏訪大明神深秘御本事大事』の解読を中心に行なった。そこに示された「大祝の即位儀礼」の構造分析を進めるうえで、神祇灌頂儀礼との関連性を探るに至っており、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでおおむね順調に推移しているので、今後も当初計画に沿った形で研究を進める。2020年度は、神長・守矢満実が興した諏訪流神道の中に、さらに真言密教がどのように取り入れられていったか、その歴史的経緯と構造の解明を目指し、史料分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画より支出が少なく、未使用分を2020年度の物品費および旅費(国内・国外の研究会や学会など)に使用する。
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