研究課題/領域番号 |
19K00112
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研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
菱刈 晃夫 国士舘大学, 文学部, 教授 (50338290)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 子どものカテキズム / 神学総覧(ロキ) / 律法 / 律法の第三用法 / 痛悔 / 良心の覚醒 / 心の純化 / 再生 |
研究実績の概要 |
『子どものカテキズム』は、メランヒトンによる宗教教育用教材カテキズムの中でも、もっとも知られた大部な著作である。これをシュレーダーはメランヒトンの「カテキズム的神学」と呼んだ。すでにコールズは、この前後に大幅な改訂が施される『神学総覧』との構造的な比較を、詳細に行っている。1521 年に初版が刊行されて晩年の 1559 年に至るまで、プロテスタント最初にしてメランヒトンの代表的神学テキストである『神学総覧』は、宗教改革の進展にともなう歴史的・社会的状況と密接に連動して幾度となく改訂されるが、とりわけ 1535 年と 1543/44 年に大きな改訂が施された。これまでのメランヒトンのカテキズムに関する一連の研究を踏まえた上で、ラテン語とドイツ語の両方で出版された『子どものカテキズム』の構造と特質について明らかにした。心の最内奥に働きかけようとするメランヒトンの教育思想は、このカテキズムに典型的にあらわれている。その究極の目的は良心の覚醒と悔い改めによる心の純化もしくは再生にあることが明確となった。しかも律法と福音の働きによって生きている限り死に至るまで続けられるべき再生である。律法と福音の作用による人間の動的な「再生」の問題を、1543 年前後のメランヒトンがどのように捉えていたのか、浮き彫りにした。 さらに関連するメランヒトンの著作の翻訳も進めた。とくに『道徳哲学概要』については、今回をもって第1部すべての試訳が完了した。あわせて『道徳哲学概要の献呈書簡』の翻訳も行い、メランヒトンの著作の意図を明確にすることができた。付随してグレトゥイゼンの『哲学的人間学』翻訳も完成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
『子どものカテキズム』に至るまでの過程が、ある程度は浮き彫りにされたものの、より詳細な解明に着手するには、さらなる文献および資料の収集と解読が必要とされる。しかしコロナ禍により十分な活動が妨げられてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
未入手の資料へのアプローチを続けると同時に、全体の総括を行う。そもそも福音のみを基点とする反律法主義と、メランヒトンの律法重視の見方は、彼がもともと人文主義者であることに起因しており、神学者であるルターとの相違も、より明確となった。メランヒトンの思想の根底にある教育的な見方の特質と意義をさらに浮き彫りにしながら、これまでの研究をまとめたい。あわせて関連するメランヒトン著作からの翻訳も続ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により現地での資料収集ができなかったため、本年度において、これを行う。
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