• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

オーギュスト・コント『実証哲学講義』の歴史的意義をめぐる学際的研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K00116
研究機関法政大学

研究代表者

安孫子 信  法政大学, 国際日本学研究所, 客員所員 (70212537)

研究分担者 杉本 隆司  明治大学, 政治経済学部, 専任講師 (80509042)
村松 正隆  北海道大学, 文学研究院, 准教授 (70348168)
松井 久  法政大学, その他部局等, 講師 (60834843)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワードオーギュスト・コント / 『実証哲学講義』 / 実証哲学・実証主義 / 科学哲学 / 科学史 / 生物学の哲学 / 社会学
研究実績の概要

実証哲学の創始者であるオーギュスト・コントの主著『実証哲学講義』(1830-42)の西洋思想史上での意義を、哲学・哲学史、科学・科学史の文脈を厳密に押えつつ明らかにしていく、このチームでの共同研究は、まだ和訳が存在していない『実証哲学講義』の本格和訳をチームで準備することと並行して行われている。昨年度もコロナの影響が残り、もっぱらオンラインでであったが、研究分担者と研究協力者を合わせた計10名のチームは、年間を通じて隔週で、毎回3時間に及ぶ研究会を開催し、輪番で担当者が、『実証哲学講義』の訳で自身が担当している部分の訳稿を紹介すると共に、その部分での哲学(史)的・科学(史)的解釈問題を提起し、それをめぐって全員で議論する仕方で作業を続けてきた。出版に向けての翻訳作業は近日に訳稿を出版社に持ち込める段階にまで到達してきている。
他方で、並行して、『実証哲学講義』の意義をめぐる諸点で、たとえば、まず、当時の数学、天文学、物理学、化学を経て生物学におよぶ諸科学の大革新にコントはどのようにアプローチし、自身の実証哲学の形成に臨んで行ったのかの詳しい足取りが、コントの理工科学校(ポリテクニクス)学生時代の講義ノートの検討にもよって、さらに明らかにされてきている。また、18世紀のカバニスやデステュット・ド・トラシーなどイデオローグの生物学の哲学とコント実証哲学の生物学の哲学との近さと遠さとがより精確に把握されてきている。さらに、ラマルク、ビシャ、キュビエ、ブランヴィル、ブルセなど当時の実証的な生物学、医学とコントの生物学の哲学との関係が、例えば環境概念をめぐって解明されてきている。さらには、コントの社会学のその後の社会哲学、倫理学への影響が、たとえばベルクソンにおいても決定的であることが確認されてきている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究はやや遅れており、そのために研究終了予定を1年延ばして2023年3月としており、研究は延長の4年目に入っている。
そのことでは、主にはコロナ禍への対応で、共同研究者それぞれに生活と研究の新たな体制つくりで、多大な負荷が生じて、研究の共同作業を一時中断せざるを得なくなったことが大きい。また、研究成果を検証し、その後の研究方向の決定で重要な、諸外国のコント研究者と年に一度予定していた学術交流の研究集会を、当初は対面で予定しており、断念することになったことも大きい。そのことで、研究に推進力を与える絶好の機会を逸してしまった。さらに加えて、最も本質的なこととして、今更ながらではあるが、全6巻5000ページに及ぶ研究対象(『実証哲学講義』)は量においても、内容においても、思想史上でも悪名をとどろかせているほどに手強く、研究を共同で歩調を合わせて進めるために、当初の意欲的な進行速度を、実際に合わせて、いささか修正せざるを得なくなったことも係っている。

今後の研究の推進方策

背水の陣で望んでいる4年目、この最終年には、共同研究体制としては、チーム構成者にはパリや札幌在住の者もおり、全員参加しての隔週の研究会は引き続き、オンラインを主に行っていく予定である。ただ、必要に応じて対面での会も交えていく。研究会で詰めて実現を図っていくこととしては、一方で、『実証哲学講義』の予定している和訳2巻本の上巻『自然科学』(原著6巻中の前半3巻に当たる)を、年度内に出版することがある。年度の前半には訳稿の精力的な相互検討が行われていく。また同時に、下巻『社会科学』(原著6巻中の後半3巻に当たる)を来年度前半に出版できるよう準備を進めていく。他方で、科研課題研究の本体をなす、コント『実証哲学講義』の意義を思想史(科学史・哲学史)上で再評価していく作業は、翻訳と並行して進めてきているが、共同研究者はそれぞれの観点から行ってきたその作業を、それぞれ今年度の前半中に取りまとめることになっている。取りまとめられた研究成果は、年度後半に予定している、本研究が主催する『実証哲学講義』をめぐる国際研究集会で報告される。その報告を取りまとめる、研究集会の報告集の出版も目指されている。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍でここまで、年度末に当該年度の研究を総括する国際的研究集会を開催できないで来た。その欠を補うために、次年度末に海外から2名、国内から1名の研究者を招聘して、研究を総括する研究集会を開催する予定である。その予算措置を行った。その他、引き続きの研究の研究図書費や資料費への支出を考えている。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022 2021

すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)

  • [学会発表] 「ベルクソンをめぐって―『道徳と宗教の二つの源泉』第4章の読解」2022

    • 著者名/発表者名
      安孫子信
    • 学会等名
      法政大学文学部哲学科最終講義
    • 招待講演
  • [学会発表] “Nishi Amane et tetsugaku; ― la question de traduction”2021

    • 著者名/発表者名
      安孫子信
    • 学会等名
      国際シンポジウム〈Les concepts en traduction japonaise〉
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Henri Bergson le pragmatiste jamesien2021

    • 著者名/発表者名
      Hisashi Matsui
    • 学会等名
      The Global Bergsonism Research Project
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi