研究課題/領域番号 |
19K00117
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
志野 好伸 明治大学, 文学部, 専任教授 (50345237)
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研究分担者 |
ラム ウィンカン (林永強) 獨協大学, 国際教養学部, 准教授 (90636573)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 植民地 / I. A. Richard / 金岳霖 / 西光万吉 / 林茂生 |
研究実績の概要 |
主として1930年代の東アジアの哲学について、植民地支配-被支配という文脈を重視しながら、多角的に研究を行い、いくつかの研究発表を行った。一つ目は、『孟子』をめぐってI. A. Richard、馮友蘭、安倍能成という3人の哲学者の同時期の言説を比較検討し、彼らの解釈に時代状況がそれぞれの仕方で反映されていることを明らかにした。二つ目は、金岳霖・沈有鼎という中国の論理学者の「中国哲学」観について検討し、彼らが「中国哲学」に対していかにして普遍性を与えるかという課題を背負っていたことを明らかにした。三つ目は部落解放運動に従事した西光万吉の満州支配に対する言説を扱い、彼の天皇崇拝が浄土真宗を背景にもつこと、そしてその天皇崇拝のあり方が日本の植民地支配批判につながっていることを明らかにした。四つ目は日本で哲学を学んだ台湾の教育学者である林茂生についての発表で、彼の台湾原住民に対する配慮が、王陽明の蛮人に対する態度と軌を一にするものであったことを明らかにした。 四つ目の発表は、明治大学で開催した第1回International Society of East Asian Philosophyの大会で行ったが、そこで嚴イ(王+韋)泓氏、黄文宏氏とともに"Taiwanese Philosophy in the Japanese Colonial Period"と題するパネルを組み、植民地下の台湾における哲学者の諸相を明らかにした。 また、日本で哲学を学んだ台湾出身の洪耀勲が残した日本語論文の中国語訳が出版されたが、そこに後序をよせ、洪耀勲の哲学の意義について解説した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた林茂生についての研究に一定の成果を出すことができ、またInternational Society of East Asian Philosophyの大会も成功裏に終えることができた。予定していた林鎮国教授の招聘も、その大会の基調講演者の一人として迎えることができた。また、3年目に予定していた安倍能成に関する研究にも部分的に着手することができた。その他、予定になかった人物についても植民地支配の観点から、研究対象に含めることができ、より多角的な理解をすすめることができた。 ハワイ大学で開催されたInternational Association for Japanese Philosophyの大会には準備の都合で参加できなかったが、代わりに予定では1回だった台湾への研究出張を2回行うことができた。 研究協力者のラム・ウィンカンも、自身の科研費課題研究と連動しながら、西田幾多郎研究を着実にすすめている。
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今後の研究の推進方策 |
最大の変更は、新型コロナウィルス感染の影響により、海外からの研究者の招聘、海外への出張がかなり困難になったこと、またオンライン授業などへの対応により、研究に費やせる時間が減少してしまうことである。ただ、2020年度は、日本の哲学者を主に扱う予定にしており、資料の収集・分析に傾注する。またオンラインのワークショップ開催なども模索したい。 2020年は西田幾多郎の生誕150周年にあたり、関連する学術イベントも予定されている。研究代表者および研究分担者はこれらの学術イベントにも積極的に関わる予定である。とりわけ西田幾多郎の『日本文化の問題』についてこれまでの研究も踏まえながら、あらためてその問題点について考える。 また、それと並行して、当初の予定どおり、柳田国男と和辻哲郎の関係から、彼らの植民地に対する言説を読み解いていく。 2019年度に行った口頭発表の活字化も、日本語、英語、中国語など、媒体に合わせてはかっていく。
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