研究課題/領域番号 |
19K00118
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
清水 則夫 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (30580849)
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研究分担者 |
グラムリヒ・オカ ベティーナ 上智大学, 国際教養学部, 教授 (60573417)
高橋 恭寛 多摩大学, 経営情報学部, 准教授 (70708031)
本村 昌文 岡山大学, ヘルスシステム統合科学研究科, 教授 (80322973)
浅井 雅 神戸大学, 国際文化学研究科, 協力研究員 (80782010)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 頼春水 / 朱子学 / 懐徳堂 / 五井蘭洲 / 春水日記 |
研究実績の概要 |
本年度は、頼春水を含めた寛政期朱子学者の出現に至るまでの思想史的経緯を、とくに朱子学に注目して明らかにした。また春水の交友関係を中心とした人的ネットワークのデータベース化を実施した。 春水を含め、寛政期に活躍した正学派や懐徳堂の思想史的ルーツは、18世紀前半の朱子学に求められる。当該期朱子学の思想的課題は、一つは「文」と「道徳」の関係であり、もう一つが「道徳」の内実である。 「文」と「道徳」の問題は、徂徠学派との対立に関わる。徂徠学派は一般的に朱子学者以上に能文だったため、朱子学者は道徳を主張してこれに対抗するのが通例であった。しかしその「道徳」の内実をめぐり、朱子学者はむしろ分裂を深めた。朱子学に依拠した道徳の主張は、忠誠論において二つの問題を引き起こす。第一に朝廷と幕府が併存するなかでの忠誠対象の選択、もう一つは日本での忠誠を朱子学という外来思想で根拠づけることの是非である。これらは垂加神道を経由して「文」と「道徳」の関係にもフィードバックして学者間の意見対立を生み、状況を一層複雑化した。 この状況を克服する可能性は五井蘭洲の思想に認められ、これが後の懐徳堂や正学派の思想および人的交流に影響したものと考えられる。 またデータベースは既に公開されており利用可能である(https://jbdb.jp/#/)。随時見直しとデータの追加を行った。今年度は新たに『春水日記』以外に、藤樹書院訪問者のデータが収集された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
頼春水以前の思想史的整理がなされ、データベースが継続的に充実されている。資料収集の面で、無窮会図書館が閲覧業務を停止したための遅れはあるが、杉之木資料の調査は終了しており、対応不可能な遅れというほどではない。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
covid-19の流行による影響は免れがたく、研究計画通りの資料調査や研究会開催に支障が出る恐れがある。連絡を密にして、不測の事態が発生した際にすぐに対応できる準備が必要である。また遠隔での研究会や打ち合わせを積極的に導入することが現実的対応策だと考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
covid-19の流行により、計画されていた研究会が中止になったために次年度使用額が発生した。2020年度以降に適切に使用する予定である。
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