最終年度の本(2021)年度は、研究成果を査読付き論文2本と査読なし研究ノート1本、査読なし校注1本として公表した。また、学会発表1回を行った。 査読付き論文「最初期源空諸伝の形成過程――山門からの訴訟などに着目して――」については、すでに昨年度の研究実施状況報告書に記載したため省略する。 もう1本の査読付き論文「善導源空夢中対面説の創作と転用――地理条件や半金色に着目して――」では、法然房源空がある夜の夢で半金色の善導と対面したという夢中対面が誰によって何のために創作され、如何に転用されたかを考察した。善導源空夢中対面説は本来、源空を軽んじる説であったが、善導から源空への師資相承を立証するものとしてその門流が転用したと考えられる。 査読なし研究ノート「日本仏教史研究と法難論」(『興風』33、2021年)は、2019年度(本研究課題初年度)のシンポ報告「興福寺奏状と斬首配流事件についての整理と提言」の一部を拡充したものである。これまでの日本仏教史研究でよく用いられてきた「法難」の語の用法の変遷について、日蓮宗を中心としつつ中世から近代まで整理した。 査読なし校注「『選択要決』校註稿――付伝写過程考――」(『早稲田大学高等研究所紀要』14、2022年)は、昨年度に発見した佛教大学附属図書館浄教寺文庫蔵『選択要決』の翻刻校注である。また、浄土学研究会第16回学術大会で発表した研究成果を付録として盛り込んだ。 その他、東京大学史料編纂所や佛教大学図書館、龍谷大学図書館で資料調査を行った。
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