研究課題/領域番号 |
19K00129
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
平倉 圭 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (90554452)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 形象 / 触発 / ダンス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、芸術の制作/経験において「形象」が身体をどのように触発するかを、具体的分析と理論研究により解明することだ。研究の焦点は2つ。1)荒川修作+マドリン・ギンズの映画『例えば』を出発点に、具体的形象が作者と観者の身体をどのように触発し変容させるかを高解像度で分析すること。2)形象の力と身体の被触発性を、人類学・心の哲学・物質論・身振り論等を横断して理論的に研究すること。そこから本研究は、芸術的形象の制作/経験を、非人間的事物と人間身体が互いを巻き込みあう異種混淆的な「ダンス」として解明することを試みる。 2019年度の特筆すべき研究実績は、形象による触発がどのように働くかを、人類学者アルフレッド・ジェルのエイジェンシー論、グレゴリー・ベイトソンのモワレ論、エドゥアルド・コーンの記号論などをもとに理論化し、単著『かたちは思考する――芸術制作の分析』(東京大学出版会、2019年)の序章として完成し、刊行したことだ。この理論は、形象の力を狭義の芸術作品を超えて扱えるようにするものであり、これにより今後の本研究の主軸のひとつが定められた。 形象による触発の探求には、具体的な作品の分析が欠かせない。2019年度は荒川修作+マドリン・ギンズの映画『例えば』および、二人による実験的な建築作品「養老天命反転地」および「遍在の場・奈義の龍安寺・建築する身体」の現地調査をおこなった。この成果は、2020年度に論文化される予定である。 また2019年度は、形象による触発という問題を、人間身体と非人間的事物のあいだの異種混淆的「ダンス」として描き出す現代美術の諸作品の調査をおこなった。また同種の問題を宮沢賢治の諸作品に見出し、予備的発表をおこなった。これは今後、本研究の重要な核として発展すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、研究の理論的成果が東京大学出版会から刊行され、多くの反響を得た点で十分な達成がある。また荒川修作+マドリン・ギンズの諸作品を始めとする具体的な形象の分析に着手できており、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、映画『例えば』の作品分析を中心としつつ、それを同時代の芸術動向、および都市論と結びつけつつ論文化する。また宮沢賢治らの作品群を切り口とした異種混淆的「ダンス」としての形象制作/経験の研究をさらに深め、人類学や環境人文学の展開を踏まえつつ、具体的な作品分析と理論形成の両面で研究を推進する。
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