研究課題/領域番号 |
19K00130
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
濱崎 友絵 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (90535733)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 音楽伝承 / トルコ系移民と音楽 / ディアスポラ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ドイツにおけるトルコ系移民の音楽伝承のメカニズムがいかなる形で成立しているのかを明らかにすることにある。本研究は、とくにトルコ民俗音楽を例に、祖国から離れたドイツ社会の中でこの音楽が再編され、伝承され形づくられていくメカニズムをミクロ的観点から解明することで、ディアスポラ下における文化接触と変容の問題に新しい視座を提供することを目指す。とくに彼ら/彼女らが「伝統音楽」に向き合う際に必ず付随する技や身体性、これらを包摂するtavirという概念がどのように習得あるいは伝授されるのかに着目しながら検証していくことを目的とする。 2021年度においては、引き続きコロナ禍のため現地調査が叶わなかったことから、昨年度の延長として、とくに伝承を可能にする「場」に着目し、近年、音楽学の領域で関心が高まりつつ公共音楽学の観点から、Greve(2017)、Niranjana ed.(2020)、Titon (2019)らの最新の研究の検討をおこなった。その成果の一部は、上智大学イスラーム研究センター研究会において研究発表をおこない、さらなる課題の明確化を図った。また同時に、ドイツにおけるトルコ系移民の音楽活動にかかわる、Guney, Pekan& Kabas(2014)や、Jager(2010)らの論考、報告にあたることで、トルコ系移民の間の「他者」と音楽の関係性、またトルコ古典音楽合唱団の実態についての議論の整理をおこなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍のため、フィールド調査の催行を見合わせる事態となっており、当初計画していたドイツにおけるトルコ系移民の音楽コミュニティでの実地調査が実施できていない状況にある。そのため、2021年度においても、音楽学的観点からの研究の方法論と分析フレームの検討に重点を置くこととし、主に二次資料の収集と検討をおこなった。
|
今後の研究の推進方策 |
22年度においては、引き続き研究の方法論とフレームワークの妥当性について検討を進め、今夏にベルリンにおいて現地調査(トルコ音楽学校および音楽コミュニティでの参与観察)を予定している。また、よりディアスポラ下におけるトルコ系移民の音楽伝承にかかわる視点を拡張・展開するため、ドイツのみならず、他のヨーロッパ諸国の事例にも目を向けることを目指す。なお昨年度と同様、コロナ禍のため現地調査が叶わない場合は、音楽学をはじめ、社会学や文化人類学領域の成果を参照することで分析フレームの検証を進めつつ、比較対象として日本における民俗音楽伝承のメカニズムについても考察を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)初年度および昨年度に計画していた現地調査を実施することができなかったため、未使用額が生じることになった。 (使用計画)2021年度の未使用額については、2022年度請求分とあわせて、文献資料の収集および現地調査による予算執行を予定している。
|