研究課題/領域番号 |
19K00131
|
研究機関 | 京都市立芸術大学 |
研究代表者 |
永井 隆則 京都市立芸術大学, 美術学部/美術研究科, 非常勤講師 (60207967)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | セザンヌ / 社会 / 近代化 / キリスト教 / ユートピアン / 写実 / 造型 / 近代絵画の父 |
研究実績の概要 |
以下の二つの研究会で「セザンヌにおけるユートピア」に関する発表を行い研究者との間で質疑応答を行い意見交換を行った。 1.「セザンヌと社会」京都大学人文科学研究所主催「芸術と社会」第17回研究会発表会(2022年6月25日(土)、於:同志社大学): ポール・セザンヌ(Paul Cezanne, 1839 1906) は、「近代絵画の父」として、モダニズム美術史の中で「写実」から「造型」、「再現」から「表現」へのパラダイムシフトの起源となった画家として高く評価されてきた。また、市民革命後の中央集権化や標準化、産業革命、都市改造、消費革命といった劇的な変化が起きた時代に活動した画家であるにも関わらず、社会状況には一切、無関心で、ひたすら純粋な造形的探究のためだけに生きた画家であるかのようなイメージが形成されてきた。そのため、セザンヌが社会とどのように関わっていたのか、社会に対するスタンスが制作にどう表明されているのかについては十分な研究がなされてこなかった。発表では、社会状況、セザンヌの言説、セザンヌが描いたモチーフと描かなかったモチーフに注目して分析を加え、これらの3 つの観点から得られた情報を相互に突き合わせることで、セザンヌが同時代の近代化社会に抵抗しながら制作を行いそれが晩年のユートピア的絵画を生む契機となったとの解釈を提出した。 2.「セザンヌとキリスト教 」第21 回新約聖書図像研究会例会(2022年 12 月 23 日(金)、於:立教大学): これまで全く論じられてこなかった「セザンヌとキリスト教の関係」を画家の生涯、画家の言葉、同時代人の証言、作品を精査して考察し、セザンヌの芸術活動にとってキリスト教信仰が果たした意義を明らかにした。特に、新しい絵画のあり方を追い求めたユートピアン的態度にキリスト教的ヴィジョンが精神的支柱となったという新知見を提示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ポスト印象派の一人、ポール・ゴーギャンにおけるユートピアの問題を考察するために、ゴーギャンがユートピアを求めて移住し制作したブルターニュ地方とタヒチ、ヒヴァオア島に出かけて現地調査を行う予定であったが、コロナ渦のため、タヒチ、ヒヴァオア島行きの飛行機が運休となり未調査のままである。
|
今後の研究の推進方策 |
1.ゴーギャンのユートピア、ブルターニュ地方への調査旅行。 2.セザンヌとゴッホのユートピア、プロヴァンス地方への調査旅行。 3.編著『ポスト印象派におけるユートピアの表象』を刊行すべく、出版助成金を申請中で、採択されれば、同一テーマに関心を持つ国内外の研究者17名と共に、本科学研究費の研究成果を公開する予定である。編著では「総論」、論考「ユートピアン、セザンヌ」、「ユートピア文献表」を執筆する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ポスト印象派の画家、ポール・ゴーギャンのユートピア、ブルターニュ地方、タヒチ島、ヒヴァオア島への調査旅行を行う予定だったが、コロナ渦のため飛行機が飛ばす、次年度の使用額が生じた。 本年度も、タヒチ島とヒヴァオア島はコロナ渦から回復していないため渡航を控え、ブルターニュ地方とセザンヌとゴッホのユートピア、プロヴァンス地方への調査旅行を行うために使用する予定である。また。研究を進める上で必要が生じた図書の購入にあてる予定である。
|