研究課題/領域番号 |
19K00148
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
朝山 奈津子 弘前大学, 教育学部, 講師 (30535505)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 19世紀後半の室内楽創作 / 19世紀後半の前衛音楽家による音楽祭 |
研究実績の概要 |
本年度は、いわゆる「新ドイツ派」と「室内楽」の概要を掴むため、「全ドイツ音楽家協会 Allgemeinre Deutscher Musiker-Verein (ADMV)」がほぼ毎年開催した「音楽家集会 Tonkuenstler-Versammlung (TV)」のうち、1859年の第1回 から1901年までの公演プログラムのデータベース化を行った。1902年に以降、シュトラウスRichard Strauss (1864-1949) を会長として行われたTVは、すでに「新ドイツ派」とは異なる路線であるとみなし、いったん対象外とした(今後、必要に応じて調査対象を拡大する可能性がある)。 TVの演奏会はおよそ4-5日の日程で、教会演奏会(劇場を会場とすることもあるが、宗教曲を演目とする)、室内楽演奏会、オーケストラ演奏会をそれぞれ1-2回、また年によってはオラトリオやオペラなど大規模作品を上演することもある。教会演奏会は多くの場合、日程の冒頭におかれ、古典的作品も交えて「歴史演奏会」として行われる。オーケストラ演奏会と室内楽演奏会は、複数回に分けて行われることが多く、1回の演奏会で10作品程度が上演され、いずれもTVの主要な演奏会として位置づけられていることが明らかになった。 室内楽演奏会は器楽と独唱が概ね半々の割合となっている。器楽の編成は多様だが、ピアノ独奏、ピアノと弦楽器の二重奏、四重奏程度の小規模弦楽アンサンブルが多く、管楽器はほとんど使用されない。これらの作品を各作曲家の創作のなかで位置づけ、室内楽がどのような需要(大規模管弦楽作品の習作、オーケストラ作品の代替品、実験的作品、あるいは機会作品など)によって書かれたのかを明らかにする必要がある。さらに、新ドイツ派の室内楽が新曲としてどのような傾向を持っていたのか、時代や編成に着目して検証せねばならないことが判った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度に予定していたデータ入力の作業はほぼ終了したが、データの詳細な検討がほとんど進んでいないため、2020年度に研究を展開するための準備が整っていない。研究の遅れの原因は、2018年度後半に着手した研究テーマと並行して行わなければならなかったことにある。 本来であれば、TVに登場しながらも後世の音楽史記述の中で重要視されることのなかった作曲家と作品について、新ドイツ派との接点や、同時代の他の音楽家との影響関係、また当該音楽家の音楽活動の様相などを洗い出す作業を行う予定であった。これにより、19世紀後半のクラシック音楽界で「室内楽」がどのような意味を持っていたかの研究仮説を得て、2020年の在外調査の基盤とするはずだった。
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今後の研究の推進方策 |
本年は、前年度の成果を基盤にドイツの文書館で作品の収集や仮説の裏付けの調査を行う予定であったが、2つの理由から、更なる遅延が予想される。 まず、先述の通り、前年度までに行うべき予備的研究が整っていないこと。この点は、すでに急ぎ進めており、研究の遅れを充分に取り戻せる予定である。 次に、防疫の観点から、2020年度に在外研究を行うのがきわめて難しいこと。今年度の予算はほぼ旅費として計上している。夏に予定していた渡航の実現可能性をよく見極め、必要に応じて2020年度末に延期する。また、安全な研究環境が確保できるかどうか今後の情勢を重視し、場合によっては研究期間の延長や研究方法の大幅な変更を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費および旅費の端数である。無理に使用せず、翌年度分の物品費あるいは旅費として有効に活用する予定である。
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