研究課題
基盤研究(C)
庭は多くの場合、図像的(虎の子渡し、三尊仏、鶴亀等)あるいは歴史的観点から見られ、分析される。しかし庭は、具体的な物と物とが複雑に結びつけられた造形的構成でもあるだろう。本研究はこうした前提から京都府福知山市の丹州観音寺、大聖院庭園の作庭工事を取材し、職人たちがどのように石を据えるか、どのように樹木を植栽するかについてスケッチ、メモ、写真、動画で克明に記録し、庭のかたちがどのように生まれてくるのかについて明らかにした。
美学
本研究は庭園研究では類例がない作庭現場のフィールドワークから庭のかたちがどのように生まれてくるのか、そこで働く職人たちはどのようにコミュニケーションし、各々の制作意図を折衝しながら作業を進めていくのかについて調査した点に特色がある。これによって、とりわけ石組をたんに図像的、歴史的に読解するだけでなく、具体的な物体の造形的構成として分析する可能性を示した。また、こうした研究成果の一部をネット上の連載記事や一般書籍にまとめて公開することで、新しい庭の見かたを広く提示することができた。