研究課題
基盤研究(C)
かつて平安時代の寝殿造の空間を飾っていた屏風や障子・襖に描かれた絵は、多くの場合、和歌と密接な関わりをもっていた。本研究では、絵と言葉の双方により風景を描き出してきた「屏風歌」の伝統が室町時代の障屏画においても濃厚に受け継がれていた可能性について検証した。特に和歌や漢詩を詠み込んだことが推測される室町時代の花鳥画や山水画について現存作例と日記の記述など記録類の分析を行い、それらの絵画が描かれた屏風や障子・襖が置かれた室礼の場について明らかにした。
日本美術史
本研究が目指したのは、屏風絵や障子絵の主題やモティーフを和歌や漢詩との関わりから分析することによって、儀礼や行事が行われた建築空間において絵画に内包される言葉がいかに空間を規定していたのか、ということを考察することであった。屏風や障子・襖は言うまでもなくかつては建築とともに存在した。現在では本来置かれた場からは切り離されて「作品」として所蔵されていることの多いこれらの屏風絵や障子絵について、同時代の文献資料の記述を参照しながら、可能な限り建築空間の室礼について解明した点に本研究の意義がある。