本研究は、20世紀後半において「思想としてのファッション」がいかに生成し、ファッションとアートの接合という現代的状況がもたらされたのかを考察するものである。 一昨年度の研究計画の変更により、年代ごとの調査ではなく研究対象および文献資料に即した調査を行いつつ、服飾作品および文献資料の読解から考察を行った。本年度は、神戸ファッション美術館、島根県立石見美術館、文化服飾学園博物館、三菱一号館美術館、インターメディアテクなどで服飾作品の実見調査と文献資料の収集を行い、読解および考察を行った。特に20世紀後半のファッションデザインがどのように発展したのか、そして日本のファッションデザインの世界的評価の確立とともに、日本の芸術文化においてファッションデザインの地位がいかに向上し、思想界におけるファッション論への注目が集まったのか、その系譜を明らかにするべく考察を行った。 そしてこの一連の調査に関する研究を以下の論稿にまとめた。すなわち「ファッションの歴史」(『歴史総合をつむぐ-新しい歴史実践へのいざない』所収、東京大学出版会)、「シャネルの近代-ファッションをめぐる機能と装飾」(『交歓するモダン-機能と装飾のポリフォニー』所収、赤々舎)、「鷲田清一以降の「ファッション学」」(『現代思想』5月臨時増刊号所収、青土社)「シームレスの美学-ファッションと皮膚感覚」(『現代の皮膚感覚をさぐる-言葉、表象、身体』所収、春風社)というタイトルの分担執筆の論稿としてまとめ、それぞれ書籍として出版し、研究成果の一部としての公開を行った。
|