本研究では墓誌蓋の篆書の書体に着目し書法の伝播を証明しようとした。特に墓誌蓋の流行が始まった北魏に着目し、篆書の墓誌蓋銘の中で同筆と思われる資料を分析した。結果として、墓誌蓋は同一の人物が揮毫したものがあると推定できた。また、北朝から隋の篆書の墓誌蓋銘には『説文解字』を参考に書かれているものがあり、これを標準的な作例とすることができた。一方、蓋銘が標準的であっても、その対となる墓誌銘の文字も標準的であるとは言えなかった。さらに、墓誌銘中の六言・四言の詩句を比較しグループ化を行った。語句の継承がされているが、書風の共通性は見いだせず、撰文と揮毫は別の仕組みで行われている可能性が明らかにできた。
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