研究課題/領域番号 |
19K00167
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研究機関 | 独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館 |
研究代表者 |
谷口 英理 独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館, 企画課, 研究員 (40422513)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 前衛美術 / 1930年代 / 1940年代 / メディア / 写真 / 映画 / アーカイブズ |
研究実績の概要 |
「テーマ①『思想』再刊号の領域横断的言説圏の実態解明」:新型コロナウィルス感染症の影響により、多くの図書館で雑誌等の網羅的な調査が不可能になってしまったため、2020年度はほとんど進めることが出来なかった。その代わりに、長谷川三郎が大陸旅行(1938年)で撮影した写真に関する研究の一環として、1930年代後半の満蒙旅行に関する書籍、雑誌記事等の調査を進めた。 「テーマ②前衛美術家による写真表現の実態解明」:2019年度に引き続き、甲南学園および福沢一郎記念館の協力のもと、長谷川三郎と福沢一郎の写真作品の写真資料の実態調査を行った。長谷川三郎に関しては、甲南学園に残されているすべての写真資料のデジタル化を行った(一部は、ポーラ美術振興財団の助成金によるもの)。また、それらデジタル画像をもとに、長谷川三郎に関する画像データベースの構築を開始した。福沢一郎については、一部の紙焼写真のデジタル化を行った。 「テーマ③造形作品における写真・映像の「影響」の実態解明」:長谷川三郎、福沢一郎の写真作品の調査を進めるとともに、オンラインによるシンポジウム「画家の写真資料 保存と情報共有の実際」(福沢記念館主催、伊藤佳之・谷口英理企画)を実施し、特に1930年代の前衛美術を専門としている研究者たちとの意見交換を行った。また、本シンポジウムの内容を『福沢絵画研究所R通信』第2号にまとめ、近日中に刊行する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルス感染症流行の影響により、出張や網羅的な調査が不可能になってしまったため、長谷川三郎と福沢一郎に研究範囲を絞らざるを得ない状況ではあったが、そのような状況下において、最大限の成果を上げることが出来たと考える。特に長谷川三郎の写真資料のすべてを予定通りデジタル化できたことは、甲南学園の協力により遠隔整理作業を進められたためである。また、当初予定していた関係する研究者による研究会は、オンラインシンポジウムという形式にしたため、関東圏以外の研究者や、美術史研究以外の分野の研究者の参加も見られ、有意義な情報交換ができた。ただし、「テーマ①『思想』再刊号の領域横断的言説圏の実態解明」については、新型コロナウィルス感染症の影響により、多くの図書館で網羅的な調査が不可能になってしまったため、2020年度はほとんど進めることが出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染症の影響は2021年度も続くと考えられるため、引き続きテーマを絞って研究を進めることしたい。特に、2020年度にデジタル化を実施した長谷川三郎の写真資料に関して、画像データベースを作成し、甲南学園と共有して他の研究者にも利用してもらえるような環境を構築する予定である。また、同じく長谷川が大陸旅行(1939年)で撮影した写真に関する調査を進め、福沢一郎、阿部展也、小石清、柳瀬正夢等の同種の写真との比較を行った研究論文をまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響により、予定していた国内外の出張が全くできなかったため、残額が生じてしまった。最終年である2021年度は、可能であれば国内出張による調査研究を実施したいと考えているが、もし難しい場合は、データベース構築に力を入れ、写真資料のデジタル化や、機材・ソフトウェア購入費として使用する予定である。
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