ダンテ『神曲』で詳細に描写された地獄や煉獄の構造が、15~16世紀の彼岸にまつわる視覚表象に何らかの影響を与えたことはこれまでも指摘されてきた。しかし15世紀後半から16世紀前半にかけての人文主義文化の中で、都市の文化的覇権にまつわる闘争という観点からそれら一連のダンテ再評価の流れを再構築し、さらに美術史的な展開と関連付ける試みはわずかだったといえる。本研究ではランディーノの『神曲』注解で最初に提示され、画家によって視覚化された彼岸イメージが、その後のルネサンス文化の中でどのように継承あるいは修正されたかを、幅広い歴史的文脈において捉え直そうとしており、その点に学術的意義があるものと考える。
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