研究課題/領域番号 |
19K00170
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三浦 篤 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (10212226)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ファンタン=ラトゥール / 花の画家 / 美術と音楽 / オットー・ショルデラー |
研究実績の概要 |
2020年度は、新型コロナウィルスの感染拡大によって、当初の調査計画を大幅に変更せざるを得なかった。 フランス(グルノーブル他)とアメリカ(ロサンゼルス他)で行うはずであった作品・資料調査は中止し、作品調査に関しては国内に限定した。中でも、アーティゾン美術館の新収蔵作品であるファンタンの《静物(花、果実、ワイングラスとティーカップ)》(1865年)を実地調査したが、1860年代の花を中心とする静物画の中でもユニークな構図を示すこの作品にある象徴性を見出すことができるという仮説を立てることができた。また、ファンタンを花の画家として捉える観点については、1870年代の作品に構図の点でジャポニスムの要素が見られることにも確信を抱いた。 日本国内でオリジナル資料の調査ができないので、これまでに集めたファンタン関係の資料・文献を整理して内容を確認し、集団肖像画に関する19世紀当時のサロン批評、ファンタン夫人編纂の作品目録、展覧会カタログ(1983年の大回顧展以降に重要な展覧会が数回開催されている)などに基づき研究を深めた。 特に、ファンタンが交流したドイツの画家オットー・ショルデラーとの書簡集(2011年)は重要で、仏独芸術家の親密な交友関係を証しているばかりか、二人の画家を通じた芸術家のネットワーク(クールベ、マネ、ホイッスラー、ルグロなど)も伺えて、レアリスム、ポスト・レアリスム世代の画家としてのファンタンの位置づけに裨益することが判明した。また、ファンタン、ショルデラーともに音楽好きであり、美術と音楽という本研究のテーマを深めることにもつながった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、新型コロナウィルスの感染拡大が進んだために、予定していた海外の美術館における調査研究を実行することができなかった。その代わり、日本でできる作業として資料や文献中心の研究を行い、別のやり方で研究を進め、テーマを深めることはできた。しかし、以上の状況から、全体としては計画がやや遅滞することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度には遅れている研究計画を推進したいが、新型コロナウィルスの感染拡大が終息しないと海外調査に行くことができない。秋以降にフランスとアメリカで調査が可能になることを願っているが、それまでの間は、日本においてこれまでの調査結果を整理したり、文献中心の研究を進めたり、インターネットでデジタル・アーカイヴにアクセスしたりして、可能な限り研究を進めて行くことを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナウィルスの感染拡大が進んだので、予定通り調査研究を進めることができなかった。予定していた海外出張をキャンセルせざるを得ず、その出張旅費が残ってしまい、別の費目で使用するにも限度があり、次年度使用額が生じた。2021年度は、ウィルス感染が終息したならばフランスとアメリカの美術館で作品資料調査を行う予定であり、その旅費として使用したい。
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