19世紀後半のフランスの画家アンリ・ファンタン=ラトゥールを、芸術交流の視点から再検討した。イギリスやドイツの美術家と交流し、文学者や音楽家とも接点があったファンタンの芸術は、異なる地域・文化を横断し、異なる芸術ジャンルを越境する特質を持つ。その国際的な交友関係を調査するとともに、特にイギリスと花の絵、ドイツと音楽という二つの側面に着目し、具体的な作品や書簡などの資料に基づいて分析することによって、地域間、ジャンル間を交差するファンタンの絵画のコスモポリタンな、そして比較芸術的な性格を明らかにすることができた。
|