研究課題/領域番号 |
19K00171
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
片山 まび 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (80393312)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 朝鮮 / 日朝交流 / 倭館 / 陶磁器 |
研究実績の概要 |
本研究内容は、朝鮮に置かれた倭館を通じた陶磁器を中心とする日朝交流を主体とするもので、本年度の研究内容は以下のとおりである。 (具体的な内容)2018年に調査した釜山・草梁倭館船滄跡周辺遺跡について、撮影・観察表・実測図などの報告書作成に向けた整理作業と関連する文献収集を主たる研究内容とした。同時に塩浦倭館に関する下調査や、ソウル市内で出土する日本陶磁についての情報も収集し、比較資料の確保に努めた。その結果、倭館においては、そこに滞在した対馬の人々が日本の食生活を維持するために日本、特に長崎経由の食器を持ち込んだことが明らかとなった。研究成果については、東洋陶磁学会総会、韓国国立晋州博物館特別展に伴う図録および講演、釜山博物館のシンポジウムにて発表した。 (意義)従来、陶磁史研究において朝鮮から日本へという一方方向のみで語られてくることが多かった陶磁器の流通について、日本から朝鮮へという双方向の動きをはじめて具体的な物証により提示することができたことで、文献のみが知られていた倭館における対馬の人々の暮らしを具体的に明らかとした点において研究上でも高い意義をもつと考える。 (重要性)倭館については文献史学上の研究や伝世品の研究がほとんどであったが、地中から発掘された遺物が初めて発見され、その意義づけを行ったことはきわめて重要であり、今後の日朝関係史を考察するうえにおいても、きわめて重要性が高いと考える。さらに今年度は韓国国立晋州博物館の展示や釜山博物館のシンポジウムにおいても成果を披露し、広く韓国の市民に成果を知らしめた点においても重要性が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進捗状況については、計画していた報告書作成についての下準備が整ったことでおおむね順調に進展していると評価した。あわせて展覧会やシンポジウム、講演会等の公表の機会を多数得たことも順調に進展している評価の根拠とした。
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今後の研究の推進方策 |
来年度の計画は、報告書のデータ完成を最大の目標とする。そのうえで一部の破片について科学分析を依頼した結果が得られるため、今まで謎であった倭館窯で制作された陶磁器の主成分等が明らかになることが期待される。いっぽうで新型コロナウィルスによる調査の変更などが危惧されるが、その場合には報告書の充実をはかるなどの工夫を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたよりもまとめ買いによって文具が安く購入できたこと、翌年度には報告書用の人件費・謝金に追加する。
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