(具体的内容) 1)今年度の研究では、渡韓が解禁となったこともあり、2018年から2019年度にかけて調査を行った草梁倭館船滄址周辺遺跡の報告書について、釜山博物館に収蔵されている遺物との対照作業と、それに伴う報告書の修正を最優先に進めた。2)先の出土資料の意義について、当初の目的であったソウル(漢城)出土の日本陶磁とも比較を進めた。3)訳官関連の史料や研究成果について学ぶため、「訳官使・通信使とその周辺」研究会に可能な限り参加した。4)上記の内容にもとづき、「訳官使・通信使とその周辺」研究会での口頭発表、Leeum美術館『朝鮮の白磁 君子志向』展において論考を発表し、招聘講演を行った。5)新たに発掘調査が行われた倭館関連遺跡出土遺物についての調査を行った。 (意義および重要性) 1)倭館に対するはじめての考古学調査であり、遺跡そのものの意義が高いが、釜山博物館の収蔵品と対照し、報告書を修正することにより、より多くの研究者の利用を可能とした。2)~4)ソウル地域の出土品と比べることにより、朝鮮陶磁が日本陶磁より単純に影響を受けたというよりも、流通において訳官が深く関与していたこと、選択においても積極的に取捨選択が行なわれ、影響を受けたとされる文様自体にも独自性が強いことを指摘し、従来の研究とは異なる方向性を提示したことに意義がある。成果の一部については講演によって韓国の一般市民に知識を還元し、社会的な意義も高めた。5)結果報告はこれからとなるが、2018年からの研究成果が継続されたという点で意義がある。
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