研究課題/領域番号 |
19K00174
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研究機関 | 文星芸術大学 |
研究代表者 |
田中 久美子 文星芸術大学, 美術学部, 教授(移行) (70222114)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ゴティエ・ド・カンプ / ノエル・ベルマール / ジャン・クーザン / フォンテーヌブロー派 / ステンド・グラス |
研究実績の概要 |
16世紀のパリでは多くの北方の画家たちが活躍していた。北方とフランスの画家たちが入り混じ、交流/協力しながら活動してゆく様子をパリの教会のステンド・グラスを中心に調査・考察した。 8月27日から9月4日にかけてパリに滞在し、16世紀のステンド・グラスの現存する4つの教会を訪れ、写真撮影を行った。以下の教会である。1)サン=ジェルマン=ロクセロワ教会、2)サン=メリ教会、3)サン=ジェルヴェ=サン=プロテ教会、4)サン=エティエンヌ=デュ=モン教会である。この教会には16世紀に活躍した北方およびフランス人画家がモデルを提供したステンド・グラスが現存しており、当時のパリの芸術活動の在り方、北方とフランスの芸術の交流のあり方や当時のパリの芸術の変遷の様子を垣間見ることができる。 この調査結果を文星紀要『ジャン・クーザンとステンド・グラス』にまとめた。上記の4つの教会堂のステンド・グラスには、いずれも、1499年以降パリで活躍した北方出身の画家ゴティエ・ド・カンプ、1515年にゴティエ・デュ・カンプに加わり活動を開始した、アントウェルペンで修業を積んだやはり北方出身の画家ノエル・ベルマール、1530年頃にノエル・ベルマールと並んでステンド・グラスにモデルを提供するようになったフランス人画家ジャン・クーザンら三者のステンド・グラスが共存している。パリの芸術の中心的活動がゴティエ・デュ・カンプからノエル・ベルマール、そしてクーザンへと移り変わり、それにつれて、北方的な様式からフランス的なものへと変容するパリの芸術の変遷の様子をうかがい知ることができる。 三者による写本画の収集も開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウイルス感染症によって海外渡航が規制されたことが大きな原因である。過去二年間にわたり調査旅行が規制され、2022年夏にようやく再開することができた。とはいえ、当初の研究計画に従って調査・研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今年が最終年度であり、夏に調査旅行を企画しているほかに、以下の手順で調査・研究を行う予定である。 パリにおける16世紀の写本画収集を行い、北方の画家たちとパリの画家たちの関係を分析し、パリでの芸術状況の推移を分析する。 その後、これまでの調査・研究をまとめ、報告書を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症のため、海外調査および最終報告書を制作することができず、次年度に繰り越すかたちとなり、次年度使用額が生じた。 最終年度に計画しているのは、パリ/ローマへの調査旅行と報告書作成の作成である。その費用として助成金を使用するつもりである。
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