「フォンテーヌブロー派における北方絵画の影響について」の研究にあたって、四つの観点を研究の方針に挙げていた。 1)フォンテーヌブローの版画の分析、2)パリで活躍した北方画家たちの調査・研究、 3)ジャン・クーザンのパリにおける初期の活動に対する北方絵画の影響の考察4)フォンテーヌブロー派の半身肖像画の成立への北方絵画の関与、である。 最終年度は、フランソワ一世の治下の北方絵画の影響について、パリにおける状況を研究対象とした。フォンテーヌブローでイタリアからやってきた芸術家たちの主導の下で、いち早く新たなフランスの芸術が胎動していたその時に、パリにおいて主導的な潮流を主導していたのは北方の芸術家たちであった。16世紀初期にパリの芸術を主導したトゥルネーもしくはブリュッセル出身のゴティエ・ド・カンプ、および次いで主導的な役割を果たしたアントウェルペン出身のノエル・ベルマールに注目し、彼らの作品を概観し、その造形的特徴を理解した。フォンテーヌブローで展開していたイタリアを接木した芸術とは異なる造形理念が支配している。次いで、ノエル・ベルマールを中心として協働した芸術家たちによって生み出された写本群に目を向けた。ベルマール・グループと称されるそれらの写本群をカタログ化し、その特徴を視覚的に把握することを目的として、入手できる限りの図版を入手した。その結果、ベルマール芸術が波及していた状況を確認することができた。同時に、パリにおいて徐々にフォンテーヌブローで誕生した生まれた芸術が流入し、芸術の潮流が移り変わる様子をベルマール・グループの写本群の推移を概観することで理解することができた。 この結果を報告書にまとめ刊行した。
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