研究課題/領域番号 |
19K00175
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
|
研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
水野 千依 青山学院大学, 文学部, 教授 (40330055)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ダイアグラム / 記憶術 / フラ・アンジェリコ / エクフラシス / 歴史人類学 / サン=ヴィクトルのフーゴー / オピキヌス・デ・カネストリス / 否定神学 |
研究成果の概要 |
本研究は、西洋近代に措定された「芸術」概念を問い直し、中近世のキリスト教文化における「像」のあり方を歴史人類学的視座において再考した。とくに、フラ・アンジェリコから遡り中世に盛んに描かれたダイアグラム的形象に注目し、古来の「記憶術(ars memoriae)」に基づく霊的修養、聖書註釈、徳の教化、神秘主義的幻視や予言という領域において、「像」が人間の思考・記憶・想像力にいかに能動的にはたらきかけ、力あるものとして息づいていたのかを分析した。従来、「芸術」として理解されてきた作品を、人間の思考や記憶の実践と切り離し得ないものとして人類学的次元で捉え直し、人間と「像」との存在論的関係を析出した。
|
自由記述の分野 |
西洋美術史
|
研究成果の学術的意義や社会的意義 |
初期ルネサンスの画家フラ・アンジェリコの作品に描かれた特異な概念図を端緒として、初期キリスト教時代のエクフラシス(言語による絵)、そして中世の視覚文化に流布した記憶術的概念図にまで遡りながら、稀有な作例の発掘とともにダイアグラム的形象の系譜を解明し、そうした概念図が古来の記憶術に基づく霊的実践や思考のなかで担った固有の機能を明らかにしたことは、美術史や歴史学だけでなく、人類とイメージとの関係を存在論的に問い直す人類学的問いにも応答する学際性をそなえており、学術的意義を有する。美的価値にとどまらないイメージの豊かな機能を掘り起こすことは、社会一般のイメージ理解にも資する点で社会的意義を有する。
|