研究課題/領域番号 |
19K00177
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
松原 典子 上智大学, 外国語学部, 教授 (10338428)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | フェリペ3世 / フェリペ2世 / スペイン・ハプスブルク家 / 宮廷肖像 |
研究実績の概要 |
本研究では、17世紀初頭のフェリペ3世期の宮廷美術に焦点を当て、研究蓄積が豊富な前後の治世(フェリペ2世期、フェリペ4世期)との比較検討を取り入れつつ、フェリペ3世期の美術の特性を明らかにすることを目指している。研究の2年目に当たる2020年度には、スペインとオーストリアでの資料収集と作品調査に基づき、本研究の個別テーマのうちの、フェリペ3世の宮廷で制作された聖なる人物に扮する王族の肖像画(retrato a lo divino)に取り組む予定であった。しかし、コロナウイルス感染拡大によって渡航ができなかったため、特にオーストリア・ハプスブルク家にルーツがあると思われるこの種の肖像画についての考察は先送りせざるを得なくなった。 その一方で、もう一つの個別テーマであるフェリペ3世期の公式肖像画の特性をめぐっては、すでに収集していた資料や新たに入手した資料を精読し、最新の研究成果も含めて問題点を整理することができた。その途上で、フェリペ3世期との比較検討の対象として欠かせないフェリペ2世期の公式肖像についての知見も深め、論文としてまとめられたことは収穫であった(「フェリペ2世の美術政策―エル・エスコリアル修道院無骸墓碑彫刻に見るハプスブルク家と帝国の顕彰」『美術フォーラム21』第43号、2021年6月上旬刊行予定)。そこで論じた、フェリペ2世期の宮廷肖像が担った「ハプスブルク家の顕彰」という役割は、スペイン古来の王家の伝統が強調されるようになるフェリペ3世期にも、多少の変化を示しつつも継承されていくものである。このテーマについては2021年度も考察を継続していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は日本での文献収集、精読とあわせて、スペインとオーストリアでの資料収集、作品調査、展覧会視察を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により渡航できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、新型コロナウイルス問題の動向により流動的ではあるものの、可能な限り早い段階でスペインおよびオーストリアでの資料収集と作品調査を実施したうえで、その成果に基づき個別テーマに沿った論文を執筆、発表したいと考えている。渡航が不可能であった場合には、すでに手元にある資料と、新たに日本から収集可能な資料を精読、分析し、可能な範囲で考察を深め、同じく論文にまとめていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大により、予定していたスペインおよびオーストリアへの渡航がかなわず、旅費の支出がなかったため。 2021年度も同様の事情で海外渡航が可能かどうかは流動的な状況であるが、渡航が可能になった場合には速やかに計画し、現地で資料収集および作品調査に当たる。その他、ノートパソコンと日本で購入可能な図書の購入を行う予定である。
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