研究課題/領域番号 |
19K00177
|
研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
松原 典子 上智大学, 外国語学部, 教授 (10338428)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | スペイン黄金世紀 / 宮廷彫刻 / レオーネ・レオーニ / ポンペオ・レオーニ / カール5世 / フェリペ3世 |
研究実績の概要 |
本研究では、17世紀初頭のフェリペ3世期の宮廷美術に焦点を当て、研究蓄積が豊富な前後の治世(フェリペ2世期、フェリペ4世期)との比較検討を取り入れつつ、フェリペ3世期の美術の特性を明らかにすることを目指している。 新型コロナウイルス拡大の影響で当初予定していた研究期間を延長した結果、2022年度は研究4年目となった。2022年夏には3年ぶりにスペインに渡航し、本研究で設定した個別テーマの一つである、フェリペ3世期の宮廷で流行した「托身」への信心とその視覚化についてマドリードの国立図書館、エンカルナシオン修道院他で資料収集と作品調査を行った。同時期の「托身」への信心隆盛の理由、その起源といった問いへの回答はいまだ模索中であるが、今年度中には論考にまとめたい。 他方で、一昨年より継続している黄金世紀スペイン・ハプスブルク家の宮廷彫刻に関する研究では、16世紀半ばのカルロス1世(カール5世)時代にイタリア人彫刻家レオーネおよびポンペオ・レオーニによって制作されたものの、その孫のフェリペ3世時代になってようやく王宮に引き渡され、王宮装飾の一翼を担うこととなった《カール5世と狂気》(プラド美術館)についての論文を執筆し、学術誌に投稿した(2023年夏に刊行予定)。同論文は、直接的にはフェリペ3世期より半世紀前の作品を論じたものである。しかし、伝統的に絵画に重きを置いていたスペイン・ハプスブルク家の王宮装飾における彫刻の役割が、フェリペ3世の治世を境にそれ以前よりも重要性を増したと見なしうることが確認できた点は、同論文での考察を通して得られた収穫であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究期間の前半にあたる2019-2021年度に新型コロナウイルス感染拡大によって渡航不可能となっていた影響で、海外での資料収集や作品調査が予定通りに進んでいないことによる。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度は本研究の最終年に当たる。そのため、一つには「研究実績の概要」にも記した通り、資料収集や文献精読を概ね終えている個別テーマについて考察を深め、論文にまとめることを目指す。 また、夏期休暇中には、本研究の総括に必要な追加の資料収集と作品調査をスペインにおいて実施予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究期間の前半に当たる2019-2021年度に新型コロナウイルス感染拡大の影響で海外渡航が叶わなかったことにより、予定通りの予算執行ができなかったため。 本研究の最終年となる今年度は、残額を海外での調査費に充てる予定である。
|