研究課題/領域番号 |
19K00179
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
河本 真理 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (10454539)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カモフラージュ / ダズル迷彩 / 第一次世界大戦 / 第二次世界大戦 / アボット・ハンダーソン・セイヤー |
研究実績の概要 |
令和3(2021)年度も、新型コロナウイルス感染症禍のため、予定していた海外渡航を全て取り止めざるを得ず、図書館も入館者数が制限されたりするなど、全般的に研究が進めにくい状況にあった。その代わり、調査する予定だったアーカイヴや図書館のオンライン上で公開されている資料を精力的に閲覧して、調査を進めることに努めた。 『西洋美術研究』No. 21の「特集:美術と科学」に合わせて投稿した論文「カモフラージュ:美術/生物学の交差する戦線」は、査読の結果、掲載されることが決定した。本稿は、カモフラージュにおける美術と生物学との関係性を、「競争」と「コラボレーション」の複雑な様態として考察するものである。軍事カモフラージュはトロイの木馬など古代から存在したが、それが単発的な詭計としてではなく、システマティックな戦術として構想され開発されるようになるのは、20世紀を待たねばならない。カモフラージュに美術と生物学が深く関わってくるのはこのときだ。こうして、生物学と美術が交差する領域においてカモフラージュを構想したのが、アメリカの画家アボット・ハンダーソン・セイヤー(Abbott Handerson Thayer, 1849-1921)である。セイヤー以降、カモフラージュという場をめぐる美術と生物学との関係性が顕著になるが、これは(不)可視性や視認性という、美術の根本的な問題と深く結びついている。かつてチャールズ・P・スノーは、科学的文化と人文的文化という「二つの文化」の隔絶と対立を懸念し、その超克を提言したが、本稿では、主に第一次・第二次世界大戦期のカモフラージュにおける生物学/美術という「二つの文化」の複雑な関係を紐解いていくことで、カモフラージュの原理が造形言語の原理といかに関わり、どのような変容をもたらしたのか検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3(2021)年度は、新型コロナウイルス感染症禍のため、予定していた海外渡航を全て取り止めざるを得ず、図書館も入館者数が制限されたりするなど、全般的に研究が進めにくい状況にあった。調査する予定だったアーカイヴや図書館のオンライン上で公開されている資料を精力的に閲覧して、調査を進めることに努めた。 『西洋美術研究』No. 21の「特集:美術と科学」に合わせて投稿した論文「カモフラージュ:美術/生物学の交差する戦線」が、査読の結果、掲載されることが決定し、研究成果の一部が公刊される予定である。 このように、オンライン上でできる調査を進め、今までの研究成果の一部をまとめたが、カバーしきれなかった部分もあったことは否めない。したがって、全体としては(3)やや遅れている、と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
令和3(2021)年度は、新型コロナウイルス感染症禍のため、予定していた海外渡航を全て取り止めざるを得ず、研究期間を1年延長した。令和4(2022)年度に渡航する予定ではあるが、新型コロナウイルス感染症をめぐる状況が予断を許さないため、海外渡航が困難な間は、引き続きオンライン上で資料の閲覧を行い、成果をまとめることに注力する。また、バイアウト制度も利用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3(2021)年度は、新型コロナウイルス感染症禍のため、予定していた海外渡航を全て取り止めざるを得ず、その分次年度使用額が生じた。そのため、研究期間を1年延長し、令和4(2022)年度には海外渡航を行う予定で、バイアウト制度も利用する。
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