2000年からの新型コロナ禍が終了したことによってようやく、2023年度には、海外調査を実施することができるようになった。これにより、中国の越州窯、龍泉窯、南宋官窯、景徳鎮窯および、同地の博物館等を見学することができた(2023年10月)。一年前に、「中尾万三による中国の越州窯の探索:青磁の源流を探った日本人」(『武蔵野美術大学研究紀要』第53号、2023年3月)を書いたが、その執筆時には、現地上林湖周辺を訪問することはかなわなかったが、遅ればせながら現地を訪問することができ、博物館や古窯址など、現地の状況を確認することができた。また、同地の博物館学芸員からも詳しく説明を受けることができた。龍泉窯博物館でも学芸員から詳しく話を聞くことができ、近年の新しい動向について学んだ。秋に中国の調査から戻ってからは、論文執筆に、鋭意取り組んでいる。現地調査の意義や重要性をあらためて実感した。11月には、東洋陶磁学会(第50回大会)が東京国立博物館を会場に開催され、古窯址探索と陶片採集、陶片の展示をめぐるセクションで、「昭和戦前期の中国における日本人陶磁学者の古窯址の探索と陶片の採集」というテーマで発表した。今回のテーマが、発掘や陶片だったので、ほかの研究者の発表からも学んだ。その際の口頭発表に基づいて、本研究の課題の一つである昭和初期の日本人による杭州での古窯址の探索に関して整理し、目下、いくつかの論文を執筆している。
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