本課題の最終年度にて、研究代表者がボストン美術館とメトロポリタン美術館を訪れて、双方の美術館にて約40点の大津絵の遺存調査、撮影、調書作成を実施した。また研究協力者による国内調査を実施し、《伊勢参宮道中図風》等の撮影、調査を実施した。それらの研究活動および実績は以下の通りである。 1.海外調査:2024年2月下旬にて、ボストン美術館(MAF)を訪れて、同館に遺存する約30点の大津絵に関する実見調査、撮影、調書作成を行った。ビゲローコレクション、Denman Waldo Rossのコレクションに大津絵が含まれていることを発見し、同館所蔵の大津絵の約半数以上が二枚継ぎの軸装であることを確認するにいたった。 2.海外調査:2024年2月下旬にて、メトロポリタン美術館(MET)を訪れて、仏画と世俗画を合わせて9点の大津絵に関する実見調査、撮影、調書作成を行った。本調査にて同館には最初期の大津絵である《菖蒲の葉を持つ野郎》(旧三浦直介蔵《若衆》との類似絵)の遺存を確認することができた。また古い大津絵仏画や柳宗悦の手紙などを本調査にて発見するに至った。 3.国内調査:研究協力者であるEFEO教授クリストフ・マルケ氏に調査依頼し、根津美術館・東京の古美術宮下にて、《伊勢参宮道中図屏風》、《中島来章の大津絵絵巻》の実見と撮影を実施して頂いた。とくに《伊勢参宮道中図屏風》の図像は江戸中期の大津絵店の様子を示す貴重な歴史資料であり、今後の研究進展に大きく寄与するものである。 4.国際発表:研究代表者が韓国の谷城にて国際学会「韓国2023 Dokkaebi Academic Society Symposium」おいて「李朝の民画と日本の大津絵の文化比較について」と題する発表を行った。大津絵と朝鮮の民画に描かれた鬼の図像を比較しながら、双方の文化的機能の差異を示す内容である。
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