研究課題/領域番号 |
19K00188
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪 |
研究代表者 |
齋藤 龍一 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪, 大阪市立美術館, 主任学芸員 (70573385)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 道教 / 山西 / 中国南北朝時代 / 道教像 |
研究実績の概要 |
本研究は、中国で生まれた最大の宗教である「道教」において礼拝対象となる偶像―道教像を対象としている。大都市・西安(陝西省西安市)と洛陽(河南省洛陽市)の中間に所在する交通の要衝、河東地域(山西省西南部)を主たる研究対象とし、道教が仏教と競いながら体系化してゆく南北朝~唐時代(5~10世紀)における道教像の地域性の萌芽と展開の過程を、同地域の仏像や他地域の道教像との詳細な比較検討を踏まえながら解明する。そして、これまであまり注目されることがなかった「道教美術」という、美術史研究における新たなジャンルの構築と発展に寄与することを目的とするものである。 本件研究の初年度は中国で発行された雑誌・書籍等をひろくあつめ、あわせて拓本に付随する付箋等の書き込みを含め関連するデータの網羅的な集成に努めた。これを踏まえ、国内の美術館・博物館に所蔵される中国彫刻のうち、主に本研究が対象とする河東地域および隣接する関連地域より将来された可能性のある作品を中心に調査を実施した。 現時点で把握することができた知見は、主担当者として大阪市立美術館において開催した特別展『仏像 中国・日本』(会期:2019年10月12日~12月8日)の作品選定および中国彫刻の原所在地の推定、そして図録の執筆に際し活用することができた(「中国仏教彫刻の展開と日本」『仏像 中国・日本』図録、大阪市立美術館・読売新聞社・NHK大阪放送局・NHKプラネット近畿、2019年)。 また福岡・久留米市の寺院が所蔵する新出作品である、中国南北朝時代後期の石造四面像2件を調査する事が叶った。調査の結果、両像共に河東地域からそう遠くない山西東南部から河南にかけての地域でつくられた可能性が高いことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年1月より、中国に端を発する新型コロナウイルス感染症の世界的な流行とその対応のため中国をはじめとする海外への渡航が事実上不可能となり、また国内での移動もままならない状況となっていることから、当初予定していた関連作品の調査が半ばで中断したままとなっている。中国道教・仏教彫刻なかでも山西・河東地域および隣接する関連地域に分布する作品について出版・刊行物の資料が未だ少なく、本研究は現地での詳細な調査が不可欠であり、本研究における調査については、進捗状況にやや遅れがでていると言わざるを得ない。 一方、本研究初年度におけるデータの網羅的な集成や作品検討については、当初の予定に従い順調に作業をすすめることができた。 中国から海外へ将来された作品は、元来の所在していた場所・地域に関する情報が失われていることが多い。そのため本研究では、図像的検討だけでなく、様々な付帯情報や古典籍に記載される道教像・仏像との対照とった総合的な検討を行っている。その結果、現在アメリカ・ワシントンのフリア・ギャラリーに所蔵され、河東地域でつくられたと考えられる北周建徳元年(572) 石造道教四面像が、中華民国三年(1914)に曹家村から出土したことを明らかにすることができた。 また河東地域と黄河を挟み隣接する陝西東部の潼関は古代より重要な関塞であったが、両地域からは共通する要素が多い一群の像が出土していることを確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も新型コロナウイルス感染症の流行状況により、中国をはじめとする現地での調査を遅延せざるを得ない状況になる可能性も否定できない。こうした特殊な状況下ではあるが、中国の研究者と緊密な連携を築きながら、初年度と同様に本研究に資する関連データを網羅的な集成し、引き続き河東地域に分布する道教像を中心に仏像との比較や周辺地域の道教像との関連性について検討・分析していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外への調査渡航が不可能となったため。
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