バンディネッリの前半生の庇護者クレメンス七世が枢機卿ジュリオ時代に庇護した人文学者クリストーフォロ・マルチェッリの対話篇『運命について』(1519年起草、Vat. Lat. 5800)を読解し、ジュリオの分身となる登場人物ユリダスが運命決定論とも偶然論とも袂を分かち、人間の意志による運命の変更を可能と考える思想を担うこと、思考の枠組みにおいてプロティノスの影響が顕著なことを明らかにした。またバンディネッリが晩年に起草した『素描の書』を、同時代のヴァザーリ『美術家列伝』やドーニ『素描』と比較して美術批評史の中に位置づけつつ、レオナルドの科学的アプローチの影響とミケランジェロへの敬意を指摘した。
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