研究課題/領域番号 |
19K00197
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
有持 旭 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (30759783)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アニメーション / 風刺画 / エストニア / クロアチア / オーラル・ヒストリー / 比較美術史 / 国営アニメーションスタジオ |
研究実績の概要 |
今年度も昨年と引き続き、コロナ禍であるため実地調査は行なわず、国内で文献調査と作品分析を行なった。3月から8月にタルトゥで開催されたTFS展は、本研究にとって重要なものであったが、現地に行くことができなかった。1940年から2019年までのエストニアにおけるアニメーション歴史について、展覧会カタログの収集や作家HPの閲覧やインタビュー記事を読み込む調査をし、風刺画、アニメーション、メディアート、IT産業といった潮流を経てきたこの国の特徴を把握し、アニメーション表現が歴史の中でどういったポジションを取っていたのかを明らかにした。その成果は日本映像学会第47回大会の口頭発表にて報告した。また、プリート・パルンのタルトゥ大学におけるアニメーション講義動画、全12個(1個あたり3時間半)を収集した。そのうち「アニメーションとは」と「ストーリー」と「線」の講義を翻訳した。講義「ストーリー」に関する分析は、日本映像学会中部支部研究会の口頭発表にて成果報告した。さらに、パルン作品『ja teeb trikke』についても論じた、アニメーションのメタモルフォシスに関する論文を日本映像学会の学会誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
海外での実地調査がcovid-19問題で延期となった。しかし、2022年4月の時点で6月に実地調査のためザグレブとタリンに渡航することが決定している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、エストニア・アニメーションに関する調査は進んだが、クロアチア・アニメーションに関する研究が滞ってしまった。そのため、最終年度の2022年度はまず、6月に開催されるザグレブ国際アニメーション映画祭を訪問し、映画祭を機に集まるクロアチアのアニメーション作家にザグレブ・フィルムについて聞き取り調査を行う。また、国営アニメーションスタジオで制作された作品(『Kilplased』、『Puhapaev』、『Kolmnurk』、『Eine Murul』、『Departure』など)に関する分析方法として、レイン・ラーマットやヘイキ・エルニツ、パルンへの聞き取り調査と原画等の現物の拝見を経て、ペレストロイカ(1985)から独立直後(1991)における視覚芸術の状況がタリンフィルムにどう影響を及ぼしていたのか明らかにし、その成果物として作品論を完成させる。さらに、実地調査しない期間には、プリート・パルンのアニメーション講義動画のうち、「アニメーションの技術1と2」の翻訳を行う。そのほか、ヨシュコ・マルシッチ、オレヴ・レムスに、当時の国営アニメーションスタジオの活動や風刺画との関係について聞き取り調査を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 予定していた海外での調査が延期となり、旅費と人件費に関して計上額と実費の間で差が出た。物品費は海外で購入する予定であった資料費であるから、同様の理由により使用することがなかった。 (使用計画) 研究期間の延長を申請した。2022年度に物品費と旅費と人件費に割り当てる。
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