2024年、エストニアの2つのスタジオから第96回アカデミー賞最終候補15作品のリストにそれぞれ1作品ずつ選ばれるという成功を収めた。これらのスタジオは元々国立アニメーションスタジオであった。そこでは風刺画からの影響を受けた独自のユーモアが描かれてきた。本研究では、このユーモアとは一体どういうものなのかを明らかにするために、風刺画受容という視点で、類似する歴史を持ったクロアチアのスタジオと比較してきた。 最終年度はまず昨年度の聞き取り調査で得られた内容を精査した。国立アニメーションスタジオであったザグレブ・フィルムとタリンフィルムにおける初期の歴史を照らし合わせながら、当時スタジオで何が起こっていたのか、ということを当事者の証言をもとに調査した。二つのスタジオで製作されたアニメーションにみられる風刺画の影響とそのユーモアの質に関して資料をもとに検証した。 クロアチアのザグレブ・フィルムに関して、ザグレブで開催された国際会議Animafest Scanner10にオーディエンスとして参加し、他国の研究者と意見交換をした。 エストニアのタリンフィルムにおける風刺画受容に関して、そのユーモアとナラティブの関係の構築がどのように確立されたのか解明するために、例としてプリート・パルン作品の分析を行った。これは新しい発見があったというよりは、これまでの研究でいくつかの隙間ができていた箇所を補っていく研究となった。 これらの成果の一部は、現代アニメーション研究の国際会議Animafest Scanner11(クロアチア、2024年6月)で「Parn’s Humor: Talking in the Fog」として国際的に発表する。さらに2024年度の日本アニメーション学会での発表を目指す。
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