研究課題/領域番号 |
19K00198
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研究機関 | 宮城学院女子大学 |
研究代表者 |
吉村 典子 宮城学院女子大学, 学芸学部, 教授 (20347917)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リチャード・ハミルトン / ベーシック・デザイン / バウハウス / ウルム造形大学 |
研究実績の概要 |
ニューカッスル大学教員時代のリチャード・ハミルトンの活動の特質として掲げた①同大学「ベーシック・コース」の確立、②大学付属ギャラリーでの展示実験と美術家との交流、③学内の制作機材・設備等の修復と活用による自身の表現メディアの開拓のうち、本年度は特に①についての資料を保管する美術教育専門の英国立古文書館(National Arts Education Archive)から、ロックダウン後、再開されるという連絡をうけ、渡航制限が緩和されたタイミングをねらって、海外調査を開始した。そのため、①を中心に本年度は取り組むこととした。「ベーシック・コース」に係る学校側の資料の他、それを受講した学生の作品を閲覧することができ、教育課題の方向を確認することができた。また、受講生の何人かは、卒業後、「ベーシック・コース」の試みを学術的に研究しており、それらの論文も閲覧することができた。 ニューカッスルでの「ベーシック・コース」の試みは、英国全土で「ベーシック・デザイン運動」として展開するが、そのモデルとなったドイツ・バウハウスをはじめ、ハミルトン自身も視察訪問したドイツ・ウルム造形大学も、英国での展開の手掛かりを有する機関であるため、あわせてドイツでの調査研究を実施した。 考察を進めるにつれ、「ベーシック・コース」前史を確認する必要性が生じたことから、アカデミー成立以降の美術教育、19世紀に各地に設立されたデザイン学校を今一度整理し、ハミルトンが、最初に教職についたセントラル・スクール・オヴ・アーツ&クラフツおよび彼を採用した同校の校長ウィリアム・ジョンストン(William Johnstone, 1897-1981)の教育思想の考察も進めた。現在これらすべてを総合的に考察する論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
海外調査を再開することができたが、地域によっては、利用できる機関も完全には通常どおりにはなっていなかっため、2年間実施できなかった調査のすべてを補うことはできなかった。一方、利用できた機関では、期せずして得られた資料も多く、現地での分析考察より、資料収集を優先した。その結果、大変多くの資料を入手することができたが、それだけに、帰国後、整理・分析にかなりの時間を要している。そのため本年度中に、成果としての論文の完成には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
事業期間の延長を申請し、2022年度を最終年度に据えて、資料の考察を重ね、論文執筆を中心に進める。過年度までに口頭発表を終えた意匠学会、美術史学会等への論文投稿、また本年度より対面で再開されることになった国際学会への口頭発表および論文投稿をめざす。それぞれの2022年度の締切日を目途にして、研究の推進をはかる。
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