研究課題/領域番号 |
19K00213
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
杉田 政夫 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (70320934)
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研究分担者 |
杉田 孝子 (伊藤孝子) 名古屋芸術大学, 芸術学部, 准教授 (20367676)
青木 真理 福島大学, 総合教育研究センター, 教授 (50263877)
谷 雅泰 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (80261717)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | コミュニティ音楽療法 / POLYFON / スティーゲ / トム・ネス / 健康ミュージッキング / 社会正義 / GAMUT / マイエ |
研究実績の概要 |
ノルウェーでは、コミュニティ音楽療法の国際的成功を受け、精神病治療に関する国のガイドラインで推奨されるなど医療認定化の動きが加速している。それに呼応して着手されたのが研究、教育、施設、企業をつなぐPOLYFONプロジェクトであり、優れた音楽療法士の急ピッチな養成が企図されている。本研究では、同音楽療法の理論的支柱でPOLYFONプロジェクトの牽引者でもあるブリュンユルフ・スティーゲ氏をはじめとした研究者へのインタビュー、施設における実習の観察を通し、同プロジェクトの特質を解明することを目的とする。 2019年度は、6月末にスティーゲ、オーロ著『コミュニティ音楽療法への招待』の訳書を風間書房より刊行した。当該領域の研究者、実践者に同訳書を献本し、意見交換することで、議論を深化させることができた。 8月末には、実地調査を実施した。8月23日はドイツのビラ―ベックに多田・フォントゥビッケル・房代氏を訪ね、ドイツの音楽療法事情やご自身の実践について、詳細なインタビュー調査を行った。26日はノルウェーのサーロムサンに音楽(療法)研究者の原真理子氏を訪問し、ノルウェーの研究動向やご自身の研究に関して聞き取り調査を実施した。27日にはニーダーレン福祉施設にてトム・ネス氏による移民の言語習得を主眼に据えた音楽療法実践を観察した。29日はベルゲンの保育所の実践、FANA文化センターにおける児童福祉領域の実践を視察した。30日にはスティーゲ氏より、POLYFONの進捗状況についてレクチャーを受け、意見交換した。 日本音楽療法学会学術大会(9月22日)にて、『コミュニティ音楽療法への招待』から日本の音楽療法実践を展望する内容の自主シンポジウムを持った。日本音楽教育学会東京大会(10月19日)では、ノルウェーにおける刑務所でのコミュニティ音楽療法や療法士養成カリキュラムに関する口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、当初の予定通り『コミュニティ音楽療法への招待』の訳書を6月中に刊行することができ、また上述の通り非常に充実した実地調査を行うことができ、それら諸成果の一端を学会でも発表したことから、概ね順調に研究を推進することができたと考えている。 ただし、年度末に福島大学にて開催を予定していたコミュニティ音楽療法の実践講座が、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、中止せざるを得なかった。また、名古屋芸術大学音楽総合研究所の音楽療法実践グループ「マイエ」に長年通う利用者と保護者を対象に、共に音楽活動をしながら、併せてインタビュー調査を実施する予定で準備を進めていたが、これも新型コロナウイルス問題で、中止を余儀なくされた。これらについては、今後の情勢を注視しつつ、2020年度以降に是非とも実現させたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に実施した現地調査、及び学会のシンポジウム・口頭発表の諸成果について、訳書『コミュニティ音楽療法への招待』とも関連付けつつ、論文3報の投稿を準備している。 2020年度もノルウェーへの実地調査を予定しているが、新型コロナウィルスの感染拡大状況によっては、2021年度に繰り延べする可能性もある。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、『コミュニティ音楽療法への招待』の訳書刊行時期に合わせて、第一筆者のブリュンユルフ・スティーゲ教授(ベルゲン大学)を日本に招聘し、国際シンポジウムを開催する予定であったが、スケジュールが合わず、見送らざるを得なかった。新型コロナウイルスの今後の状況を見極めつつ、2020年度以降に実現させたいと考えている。
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