研究課題/領域番号 |
19K00213
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
杉田 政夫 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (70320934)
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研究分担者 |
杉田 孝子 (伊藤孝子) 名古屋芸術大学, 芸術学部, 准教授 (20367676)
青木 真理 福島大学, 人間発達文化学類附属学校臨床支援センター, 教授 (50263877)
谷 雅泰 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (80261717)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | コミュニティ音楽療法 / POLYFON / ブリュンユルフ・スティーゲ / トム・ネス / 健康ミュージッキング / 社会正義 / 北名古屋市社会福祉協議会 / 名古屋芸術大学音楽療法グループ「マイエ」 |
研究実績の概要 |
ノルウェーではコミュニティ音楽療法の国際的な成功を受け、国が定める精神病治療等のガイドラインにおいて音楽療法が強く推奨されるに至り、国民的期待が寄せられ、医療認定化への機運が高まっている。しかし現状では、音楽療法士数が国内で300人程度しかおらず、北欧諸国が重んじるアクセスの平等性を担保するには少なくとも1200人まで増やす必要があるという。この問題を解決すべく、ベルゲン大学グリーグアカデミー音楽療法研究所(GAMUT)、同大学音楽療法学科の学生教育、地域の病院や福祉・文化施設、財団や企業等のリソースをネットワーク化することで、優れた音楽療法士を急ピッチに養成するために立ち上げられたのが、POLYFONプロジェクトである。 このPOLYFONの推進においても、「コミュニティ音楽療法」は重要な理論的支柱といってよい。2020年度はその動向を探るべく、ブリュンユルフ・スティーゲ氏への同プロジェクト進捗状況に関する聞き取りや、ベルゲンでのコミュニティ音楽療法実践の参与観察を予定していたが、コロナ禍につき実現に至らなかった。故にこの間は、これまでの実地調査や参与観察で得たデータの整理、分析、考察に専念することとした。具体的には、コミュニティ音楽療法の諸特性に関するスティーゲ氏の詳細な解説、及びビオルグヴィン精神医療センター、FANA文化センター、U82コミュニティセンターにおける音楽療法実践のアクチュアリティについて、論文にまとめた。 また、日本型のコミュニティ音楽療法実践やPOLYFONプロジェクトを構想するため、協働で実践を行っている北名古屋市社会福祉協議会の担当者にインタビュー調査を実施した。さらに関連研究として、音楽療法実践における自閉症児Aとの臨床即興演奏の分析を通し、音楽療法士側のA児の捉え方、ひいてはそこから導かれる音楽療法の視座の転換について検討する論文を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述の通り、研究テーマに関する論文作成は順調に進んだものの、コロナ禍につき、現地でのコミュニティ音楽療法の参与観察や、POLYFONプロジェクトの進捗状況に関するインタビュー調査を実現させることができなかった。本来であれば前年度末に予定していた拙訳書『コミュニティ音楽療法への招待』発刊に合わせてのスティーゲ氏招聘も、やはり見送らざるを得なかった。さらには、名古屋芸術大学音楽総合研究所の音楽療法実践グループ「マイエ」に長年通う利用者と保護者を対象に、共に音楽活動をしながら、インタビュー調査を実施する予定で準備を進めていたが、これも2021年度以降への繰り延べを余儀なくされた。 今後の情勢を注視しつつ、研究期間の延長も視野に、上記事項についてはいずれも実現させたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
POLYFONプロジェクトに深く関係する学生教育(音楽療法士養成カリキュラム)については、ノルウェーで資格を付与している2機関であるノルウェー国立音楽大学とベルゲン大学双方でインタビュー調査を既に実施しているので、これを論文にまとめる予定である。コミュニティ音楽療法については、刑務所内、及び出所後の実践について実地調査した成果をもとに、論文の執筆を進めていく。 今年度はノルウェーでの実地調査を予定しているが、新型コロナ問題でどうしても渡航困難な場合には、Zoomでのインタビュー調査を考えおり、既に実践家と参加者の内諾を得ている。とはいえ研究遂行上、どうしてももう一度ノルウェーでの実地調査を行い、POLYFONプロジェクトの帰趨(音楽療法の医療認定化の行方も含めて)を確かめる必要があることから、1年の研究期間延長を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度にノルウェーの実地調査を予定していたが、実現させることができなかったため。また2019年度末に予定していた、ノルウェーからのスティーゲ氏招聘も延期を余儀なくされている。 2021年度については、研究遂行上、どうしてもノルウェーでの実地調査を実現させ、POLYFONプロジェクトの帰趨を見極める必要があるが、それが困難な場合には、1年の研究期間延長を考えている。
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