研究課題/領域番号 |
19K00218
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
京都 絵美 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (40633441)
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研究分担者 |
早川 典子 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 室長 (20311160)
塚本 麿充 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (00416265)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 絹本絵画 / 画絹 / 絵画材料 / 絵画技法 / 製糸技術 |
研究実績の概要 |
最終年度である本年は画絹の糸形状に関する調査研究を中心に、分担者らと共同でマイクロスコープ調査および基礎試料の製作、文献史料に基づいた実験を行った。また、前年までに引き続き、平安時代絹本絵画のポジフィルムの画像アーカイブを作成した。 調査では佐賀県の武雄市図書館・歴史資料館において武雄鍋島家資料「絵絹」三本と鍋島茂義(1800-1862)筆「吉野桜図」を調査し江戸時代の繰糸、製織技術の基礎的情報を得た。また、東京藝術大学大学美術館と奈良国立博物館において、近代以前の作品を中心に絹本絵画の画絹調査を行い織構成、糸形状の情報を収集、整理した。実験では現代製糸技術と在来製糸技術によって作られた糸を用いて基礎試料となる画絹を製作し、砧打ちの効果や描画への影響等を比較検証する実験を行った。成果の一部は「生糸の抱合と画絹の性状に関する研究」(文化財保存修復学会第45回大会、国立民族学博物館)として研究発表を行うことが決定している。そのほか邦楽器原糸製造保存会で土室乾燥法の繭保存を取材し、殺蛹・繭保存法の違いによる絹糸の熱変性について調査した。 研究期間を通して養蚕・製糸関係の技術者、研究者とも交流をもつことができ、多くの知見が得られたほか、研究分担者、研究協力者らと、技法材料、美術史、文化財科学の領域で連携して繰糸・製織技術と絵画技法に関する意見交換を行い、今後の課題について共有することができた。特に近代以前の中国の製糸技術については今後研究を継続する必要があり、すでに一部着手している。また、現代の絹をめぐる状況が予想以上に厳しいことが明らかとなり、研究会、ワークショップ等で一般に向けても情報を発信した。
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