研究課題/領域番号 |
19K00219
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤木 秀朗 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (90311711)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 映画 / ドキュメンタリー / エコロジー / 廃棄物 / 放射性廃棄物 / 環境問題 |
研究実績の概要 |
本研究は、人が環境社会問題に向き合う上で、映像メディアがどのような役割を果たしてきたのかを明らかにし、今後の展望を示すことを目的としている。具体的には、福島第一原子力発電所事故後の環境社会問題を扱ったドキュメンタリー映像作品とそれに関連する国内外のドキュメンタリー映像作品を事例に、次の4つの観点から調査し分析することを目指している。①放射性物質のグローバル流通問題、②エネルギーと温暖化問題、③廃棄物、④環境映画祭・自主上映会である。また、将来、一冊の書籍として観光するために、すでに論文を公刊してきた⑤公共性問題を扱ったドキュメンタリーと⑥自然との共生問題を扱ったドキュメンタリーに関する研究を修正・発展させる作業も行うことにしている。 2019年度は、①と③の課題に頂点を合わせ、5月にロンドン大学バークベック校、8月にインターアジア・カルチュラル・スタディーズ・カンファレンス(フィリピン)、1月に名古屋大学で主催したシンポジウム、2月にカルフォルニア大学バークレイ校で口頭発表を行い、それぞれの質疑応答で、非常に有益な示唆を得た。また、⑥に関して、5月にイーストアングリア大学、2月にカルフォルニア大学サンタバーバラ校にて招待講演を行い、書籍化にあたって論考を修正するための遊戯な示唆を得た。また、福島映像祭と山形国際ドキュメンタリー映画祭で計画通り調査を行なった。さらに、この研究課題には直接関わらないが、京都大学、日本史研究科近代史部会、台湾政治大学、韓国・釜山国際映画祭関連シンポジウムでも招待講演を行い、映画・社会・文化とエコロジーの関係を考える上で貴重な機会となった。さらに、英国映画協会(Brtish Film Institute)から2020年4月刊行予定の編著書The Japanese Cinema Bookの編集と序章・第3章の執筆も本研究課題に役立っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要に記載したように、本研究課題に関する口頭発表・招待講演を国内外で7回行い、その都度、研究対象について調査・分析を行うことで研究を発展させるとともに、それぞれの発表・講演の場では、今後論文と書籍に成果をまとめる上で有益な示唆を得ることができた。また、9月に東京で開催された福島映像祭、10月に開催された山形国際ドキュメンタリー映画祭でも、計画通り有意義な調査を行うことができた。しかし、11月に調査を計画していたシンガポール・エコロジー映画祭は、大学業務の関係で渡航が困難になり、2月に調査を予定していた東京でのグリーンイメージ国際環境映像祭は、ちょうど同時期にカルファルニア大学バークレイ校とサンタ・バーバラ校に招聘されたためにキャンセルした。また、上記に記載したThe Japanese Cinema Bookの編集などに予想以上に多くの時間を要したこともあり、本研究に関する論文を発表できなかったことは、当初の計画よりも遅れている点として認めざるを得ない。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度は、2020年2月の段階で、4箇所ほどの場所で口頭発表・招待講演を行うことが決まっていたが、新型コロナウイルス感染症のために、すべてが延期となり、今年度中の開催は難しい状況である。また、図書館やアーカイブなどが閉鎖されたり、利用が極端に制限され、映画祭も開催の見通しが立たないため、どれぐらいの調査が可能か不安なところがある。とはいえ、2019年度までに口頭発表を積み重ねてきた「放射性物質のグローバル流通問題」と「廃棄物」の課題については論文にまとめて雑誌への投稿を試みたい。また、本研究課題に直接関わるものではないが、テーマ的に重なっているところがある拙著『映画観客とは何者か――メディアと社会主体の近現代史』(名古屋大学出版会、2019年2月)の改定英語版を、Makinging Audiences: A Social History of Japanese Cinema and MediaというタイトルでOxford University Pressから出版することが決まったので、この作業も行うことになる。
|