本研究は、人が環境社会問題に向き合う上で、映像メディアがどのような役割を果たしてきたのかを明らかにし、今後の展望を示すことを目的としている。具体的には、福島第一原子力発電所事故後の環境社会問題を扱ったドキュメンタリー映像作品とそれに関連する国内外のドキュメンタリー映像作品を事例に次の 7つの観点から調査し分析することを目指している(申請当初の計画を多少更新した)。1新植民地主義、2エネルギー、3廃棄物、4公共性、5マイノリティ、6動物、7記憶である。このうち3、4、6についてはすでに公刊してきた論文を修正・発展させ、将来刊行する予定の書籍に組み込む予定である。 2023年度は、エネルギーに関して、7月にポートランド(オレンゴン州)で開催された文学環境研究学会(ASLE)/環境研究科学学会(AESC)で口頭発表を行い、それを基に論文を執筆しイギリスの映像研究の権威あるジャーナルに投稿した。現在、査読結果のフィードバックを参照しながら修正稿を完成させ再投稿するところである。また、2月はじめに福島の浜通りで原発事故とその後に関する多数の展示場を調査し、それを基にした論考を2024年7月までに完成し、依頼されている共著書Brill’s Handbook on Memory Studies in East Asiaに提出予定である。さらに、マイノリティに関して、とくに障がい者に関わる映像を調査し、学会発表と論文執筆の準備を進めている。最終的には、これらの論考をさらに修正して出版計画している書籍に組み込む予定である。その他、間接的に関係する、映像と環境問題をテーマにした発表を二つの研究集会で行った。その成果の一部が共著書Eco-Disasters in Japanese Cinema (Association for Asian Studies)の一章として2024年7月に刊行される。
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